コラム

澤木一貴です。
ここまで、第1回で「市場分析」、第2回で「基礎理論」、第3回で「ファンクショナルトレーニングとの融合」についてお話ししてきました。 少しずつ、BFRトレーニングが単なる「流行りの筋トレ」ではなく、トレーナーとして生き残るための「強力な武器」であることが伝わってきたのではないでしょうか。
さて、第4回の今回は、もっと具体的な「集客」と「お金」の話に直結するテーマです。 ズバリ、「誰をお客さんにするか?」です。
もし、あなたが今、「ベンチプレス100kgを目指す男性」や「コンテストに出たい若者」ばかりをターゲットにしているなら、あえて言います。 その市場、狭すぎませんか?
もちろん、そういう熱心なトレーニーを指導するのは楽しい。トレーナー冥利に尽きる瞬間です。私だって大好きです。 しかし、ビジネスとして安定させ、さらに大きく飛躍させるためには、もっと巨大で、もっと切実なニーズを持った層に目を向ける必要があります。
それが、「美しくなりたい女性」と「健康を取り戻したい高齢者」です。
この二つの層は、フィットネス業界における最大のマジョリティでありながら、多くのトレーナーが効果的にアプローチできていない「金脈」でもあります。 そして、この層を独占するための最強のフックこそが、BFRが生み出す「成長ホルモン」なのです。
今回は、BFRトレーナープロとして、この巨大市場をどう切り拓いていくか、その戦略を伝授します。
まず、思考の転換が必要です。 私たちトレーナーは、どうしても「筋肉」や「筋力」を売りたがります。「スクワットで大腿四頭筋を鍛えましょう」と言ってしまう。
しかし、一般の女性や高齢者は、筋肉そのものが欲しいわけではありません。 女性が欲しいのは「筋肉」ではなく、「ハリのある肌」や「引き締まったライン」、そして「太りにくい体」です。 高齢者が欲しいのは「筋力」ではなく、「孫と遊べる体力」や「膝の痛みのない生活」、そして「寝たきりにならない安心」です。
この「本当に欲しいもの(ベネフィット)」を提供できる最適解が、BFRトレーニングなのです。なぜなら、BFRには他のトレーニングでは代えがたい「内分泌系への爆発的な効果」があるからです。
女性の集客において、これほど強力なキラーワードはありません。 「安静時の最大290倍の成長ホルモン分泌」。
第2回でも少し触れましたが、BFRトレーニングを行うと、筋肉内に溜まった代謝産物の刺激により、脳下垂体から大量の成長ホルモンが分泌されます。 この数値は、通常のハードなウエイトトレーニングを行った時(約100倍程度)と比較しても桁違いです。
では、この成長ホルモンが女性にとってどんな意味を持つのか。トレーナーのあなたは、これを魅力的に「翻訳」して伝える必要があります。
究極のアンチエイジング(美肌・美髪) 成長ホルモンは、細胞の修復や再生を促します。肌のターンオーバーを活性化させ、コラーゲンの生成を助ける。つまり、肌にハリとツヤが戻ります。髪の毛や爪も丈夫になる。 私はよくクライアントにこう言います。 「高い美容液を外から塗るのもいいですが、BFRで体の中から『天然の美容液』を全身に巡らせましょう。これに勝るコスメはありませんよ」と。この言葉、刺さります。
強力な脂肪燃焼効果 成長ホルモンには、脂肪分解作用があります。トレーニング後、数時間にわたって脂肪が燃えやすい状態が続きます。 「ムキムキにはなりたくないけど、脂肪は落としたい」という女性特有のニーズに対し、「重いものを持たなくても、ホルモンの力で脂肪を燃やすメソッドです」と伝えれば、ウエイトトレーニングへの心理的ハードルを一気に下げることができます。
むくみ・冷えの解消 BFRは血流を制限した後、ベルトを外して一気に解放(再灌流)します。この時、ダムが決壊したように血液が末梢血管まで勢いよく流れます。 これにより、毛細血管が拡張し、血管の弾力性が蘇ります。万年の悩みである「冷え性」や「むくみ」が、その場でスッキリする感覚。この即効性は、体験セッションでの成約率を劇的に高めます。
「筋トレはキツイから嫌」という女性も、「美肌とダイエットと冷え性改善が同時に叶う、1回30分のメソッド」と聞けば、目の色が変わります。 BFRは、エステサロンとジムの境界線を飛び越えることができるのです。
次に、高齢者市場です。 ここはこれから、間違いなく需要が爆発します。 しかし、多くのジムは高齢者の受け入れに及び腰です。なぜか? リスクが怖いからです。
「膝が痛くてスクワットができない」 「血圧が高いから力めない」 「骨粗鬆症で骨折が怖い」
従来のウエイトトレーニングでは、こうした方々に対して「できること」が極端に少なくなってしまいます。あるいは、リスクを冒して指導するか、軽い体操でお茶を濁すか。
ここでBFRが、「医療とフィットネスの架け橋」になります。
BFRトレーニングは、もともと医療現場でのリハビリテーションから発展してきた歴史があります。 最大の特徴は、「関節や腱に物理的な負担をかけずに、筋肉にだけ強烈な負荷をかけられる」こと。
例えば、変形性膝関節症の方。 重いバーベルを担ぐなんて論外ですし、自重のスクワットさえ痛む場合があります。 しかし、BFRベルトを巻いて、椅子に座り、重りを持たずに足踏みをする。あるいは、軽いチューブを引く。 関節にかかる物理的ストレスはほぼゼロです。しかし、筋肉内は血流制限によって低酸素状態になり、ハードトレーニングと同じ反応を起こします。
結果、痛みを感じることなく、膝周りの筋肉を強化できる。 筋肉がつけば関節が安定し、痛みが減り、歩けるようになる。 歩けるようになれば、活動量が増え、心肺機能も向上し、認知症予防にもなる。
これを私は「ポジティブ・スパイラル(正の連鎖)」と呼んでいますが、このきっかけを作れるのがBFRトレーナーなのです。
整形外科でのリハビリは、制度上「期限」があります。 「まだ痛いのに、もう保険ではリハビリできません」と放り出されてしまう「リハビリ難民」が世の中にはたくさんいます。 そうした方々の受け皿になれるのは、正しい知識を持ったBFRトレーナーしかいません。
これは単なるビジネスチャンスというだけでなく、社会的意義の非常に高い仕事です。地域社会で「あそこの先生にお願いすれば、歩けるようになる」という評判が立てば、広告費なんてかけなくても、口コミだけで予約は埋まります。高齢者のコミュニティネットワークを甘く見てはいけません。
では、実際にどうやってこれらの層を集客し、クロージングするか。私の講座で詳しく教えるテクニックの一端を紹介しましょう。
【女性へのアプローチ:体験直後の「手」を見せる】 体験セッションで腕にBFRを巻いてトレーニングした後、ベルトを外します。 その直後、「自分の手のひらを見てください」と言います。 血流が一気に再灌流し、手のひらが赤く、温かくなっているはずです。血管が浮き出て見えることもあります。
「見てください、これが今、全身を駆け巡っている状態です。毛細血管の隅々まで酸素と栄養が届き、成長ホルモンが出ていますよ」 この「目に見える効果」と「体感(温かさ)」は、どんな説明よりも説得力があります。
【高齢者へのアプローチ:「100歳まで自分の足でトイレに行きたいですか?」】 高齢者の方は、漠然とした将来の不安を抱えています。 「筋肉をつけましょう」ではなく、「生活の自立」をキーワードにします。
「今はまだ大丈夫ですが、筋肉は毎年1%ずつ減っていきます。何もしなければ、10年後は今より10%筋力が落ちる。そうなると、お風呂やトイレに人の介助が必要になるかもしれません」 と、リスクを優しく、しかし明確に伝えます。その上で、 「でも、重いものを持つ必要はありません。このベルトを使えば、座ったままで、お散歩に行くための筋肉が作れますよ」 と解決策(BFR)を提示します。
恐怖(リスク)と安心(ソリューション)のセット。これが信頼を生みます。
ただし、女性も高齢者も、非常に「安心・安全」に敏感な層です。 「血を止めるなんて怖くないの?」「血管が切れたりしない?」 当然の疑問です。
だからこそ、「BFRトレーナープロ」という資格が重要になるのです。 「私は専門のカリキュラムを修了し、生理学に基づいた安全な圧設定と管理ができる有資格者です」 と胸を張って言えるかどうか。 そして、基礎疾患(高血圧や糖尿病など)や禁忌事項(やってはいけないケース)についての正しい知識を持っているかどうか。
自己流のなんとなくの知識で、高齢者にベルトを巻くのは絶対にやめてください。事故が起きてからでは遅いのです。 逆に言えば、しっかりとした知識と資格さえあれば、あなたは競合ひしめくトレーナー業界の中で、「美容家」であり「治療家のパートナー」という、独自のポジションを確立できるのです。
いかがでしたか? BFRトレーニングの可能性が、マッチョな世界だけでなく、もっと広くて深い場所にあることがお分かりいただけたと思います。
女性の「美」への執念と、高齢者の「健康」への切実は、景気に左右されない強固なニーズです。 ここを掴めば、あなたのトレーナービジネスは盤石になります。
次回は、ターゲットの話からさらに一歩進んで、「時間」と「単価」の話をしましょう。 「忙しい経営者」を捕まえろ! 1回30分で満足させ、あなたの時給を劇的にアップさせる「高単価・時短セッション」の作り方について解説します。 労働時間を減らして、売上を上げる。夢のような話ですが、BFRなら可能です。

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通常のトレーニングには1RM(1回持ち上げることが限界の重さ)の60%以上の重さを必要としていますが、BFRトレーニングでは1RMの20%程度の重さで効果を得るとができます。
BFRトレーナーズ協会は、安全で的確なトレーニングの指導を行い、正しい知識と技術を持ったトレーナーを育成し、より多くの人たちにその効果を実感してもらえるようBFRトレーニングの普及を目指します。
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