コラム
2026/02/21

脳の霧を振り払い、思考の「解像度」を上げる――BFRトレーニングがもたらす、知られざる覚醒の科学先日、私のセッションを受けに来られたある経営者の方が、トレーニングを終えてベルトを外した瞬間に、ポツリとこう仰いました。
これ、実はBFR(血流制限)の現場では、決して珍しい感想ではありません。多くの方は「筋肉を鍛えに来た」はずなのに、終わってみると「頭が驚くほどスッキリした」と、どこか不思議そうな顔をして帰っていかれます。世の中には、高価なサプリメントや、最新の快眠グッズが溢れています。でも、実を言うと、私たちの脳を支配しているのは、もっと原始的なもの。そう、「血流」です。
今回は、なぜたった10分の加圧が、あなたの脳に停滞している「霧(ブレインフォグ)」を、文字通り吹き飛ばしてしまうのか。その舞台裏にある、少しズルいくらい強力なメカニズムについて、本音でお話ししようと思います。
そもそも、なぜ現代人の脳はこれほどまでに疲れ切っているのでしょうか。
四六時中スマホから流れ込む情報の濁流。常にオンのまま、オフへの切り替え方を忘れてしまった自律神経。私たちの脳というハードウェアは、いわば「冷却ファンが壊れたままフル稼働しているノートパソコン」のような状態です。熱を持ち、処理速度が落ち、やがてフリーズする。この「脳の熱」を下げ、淀んだ空気を入れ替えるには、ただ休むだけでは足りません。脳という臓器を、物理的に、そして生理学的に「洗浄」してあげる必要があるんです。
そう聞くと、どこか体育会系の根性論のように聞こえるかもしれません。でも、これは紛れもない生理学の事実です。
カギを握るのは「BDNF(脳由来神経栄養因子)」という物質。
聞き慣れない名前かもしれませんが、これ、専門家の間では「脳の肥料」と呼ばれています。神経細胞を守り、ネットワークを繋ぎ直し、脳の若々しさを保つために欠かせない、まさに至宝のタンパク質です。
普通、このBDNFを十分に引き出そうと思ったら、それこそ心臓が飛び出るような激しいランニングを30分以上続けなければなりません。多忙を極めるあなたが、仕事の合間にそんなことをするのは、現実的ではありませんよね?
BFRトレーニングの真の凄さは、この「20分の苦行」を「10分の知的な刺激」に凝縮できる点にあります。ベルトで適切に血流を制限して動くことで、体内には急激な代謝変化が巻き起こります。脳はそれを「身体の緊急事態」と察知し、修復を急ぐために、短時間でBDNFをドバドバと放出し始める。
いわば、運動による脳への恩恵だけを、スマートに「つまみ食い」するようなものです。
BFRを体験した方ならお分かりいただける、あのベルトを外した瞬間の「ドッ」と血液が巡る感覚。私はあれを、現場では「脳の洗浄タイム」と呼んでいます。
ベルトを外した瞬間の猛烈な血流(反応性充血)は、血管の内側を刺激し、一酸化窒素(NO)を放出させます。これが、普段は緊張でガチガチになった脳内の毛細血管までをも、しなやかに広げてくれるんです。
脳は、体重のわずか2%ほどしかないのに、全身の酸素の20%を食い尽くす、超・燃費の悪い臓器です。その脳に、新鮮な酸素と栄養が一気に流れ込み、代わりに溜まっていた老廃物が押し流されていく。
「視界がクリアになった」というあの感覚は、脳が久しぶりに十分な酸素を吸って、深呼吸をした証拠なんです。
では、具体的にどうすればいいのか。
脳を覚醒させるのが目的なら、歯を食いしばって重いダンベルを上げる必要は一切ありません。むしろ、「血管を優しくマッサージする」くらいの感覚が、最も効果を引き出します。
私がよくお伝えするのは、「まずは第2の心臓を動かしましょう」ということ。
脚の付け根にベルトを巻き、ゆっくりと踵を上下させる。たったこれだけで、重力に逆らって血液を脳へと押し戻すポンプが再起動します。午後のデスクワークで頭がぼんやりしてきたとき、10分のBFRスクワットが、3杯のコーヒーよりも確実に脳を覚醒させてくれます。
また、意外と見落とされがちなのが、腕の加圧BFRです。パソコン作業で巻き肩になり、首周りが固まると、脳への血流は「渋滞」を起こします。腕にベルトを巻き、何も持たずにゆっくりと腕を上下に動かすだけで、その渋滞は解消されます。ベルトを外した瞬間の、首から上がフワッと軽くなる感覚。これを一度味わってしまうと、もう元には戻れません。
あなたの真の能力は、血流の「淀み」に隠れているだけ。
脳のために分泌させた成長ホルモンは、同時に体脂肪を分解する強力なエンジンとなり、ダイエット効果を「おまけ」として連れてきます。さらに、BDNFはストレス耐性、つまり「折れない心」を保つための基礎体力にも直結しています。脳を整えることは、人生の質を整えることそのものなんです。
ただし、ここで一つだけ、プロとして絶対に譲れないことがあります。それは、脳という最も繊細な臓器にアプローチするからこそ、「ベルトの圧」がすべてを決める、ということです。
強すぎる圧は脳をパニックに陥らせ、逆効果になりかねません。私たちBFRトレーナーズ協会の有資格者が、あなたのその日の体調に合わせて「絶妙なポイント」を探し出すのは、そのためです。
優れたアイデアや、迅速な決断。それは根性でひねり出すものではなく、適切にメンテナンスされた「脳」と、そこを流れる「血流」という土台があって初めて、自然と湧き上がってくるものです。
そう感じたなら、それはあなたの能力が落ちたのではなく、単なるメンテナンス不足かもしれません。ベルトを外した瞬間に訪れる、あの澄み切った明晰な世界。それこそが、あなたが本来持っている真のポテンシャルなのですから。
最後に、指導現場で多くの成功者を見てきた私からお伝えしたいことがあります。
「体力をつける」ことは、単に重い荷物を持てるようになることではありません。それは、「自分の脳を、いつでも最高の状態にセットできるスキル」を手に入れること。
BFRは、そのための最も短く、かつ確実な近道です。
もし、あなたが今の自分に満足していないのなら、あるいはもっと高いステージへ行きたいと願うなら。
一度、その「腕」と「脚」に、新しい巡りを与えてみてください。
きっと、明日の朝の目覚めが、そしてデスクに座った瞬間の「思考の鋭さ」が、今までとは全く別物になっているはずです。
BFRトレーニング

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通常のトレーニングには1RM(1回持ち上げることが限界の重さ)の60%以上の重さを必要としていますが、BFRトレーニングでは1RMの20%程度の重さで効果を得るとができます。
BFRトレーナーズ協会は、安全で的確なトレーニングの指導を行い、正しい知識と技術を持ったトレーナーを育成し、より多くの人たちにその効果を実感してもらえるようBFRトレーニングの普及を目指します。
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