コラム
2026/02/01

こんにちは、澤木一貴です。
前回のコラムでは、少し厳しい現実やビジネスの話、いわゆる「お金と生存戦略」について熱く語らせていただきました。「澤木さん、最初から飛ばしすぎだよ」なんて声も聞こえてきそうですが、それだけ私は今のトレーナー業界に危機感と、同時に大きな可能性を感じているのです。
さて、今回は少しトーンを変えて、「BFRトレーニングの中身」についてお話ししましょう。
実は最近、BFRトレーナーズ協会の公式コラムを読んでいて、ふと思ったことがあるんです。 「……ちょっと、難しすぎないか?」と(笑)。
もちろん、専門家として最新のエビデンスや複雑な生理学用語を知っておくことは大切です。でも、いきなり「mTORが~」とか「ミオスタチンが~」なんて話をされても、現場のトレーナーとしては「でお、結局お客さんにどう説明すればいいの?」と戸惑ってしまうこともありますよね。
そこで今回は、私、澤木が「翻訳家」となって、BFRの基礎理論をどこよりも優しく、かつ現場で使える言葉で解説したいと思います。 教科書的な定義ではなく、クライアントの目の前で語れる「生きた知識」として受け取ってください。
まず、皆さんに質問です。「BFRトレーニングって何ですか?」と聞かれたら、どう答えますか?
「ベルトを巻いて血を止めるやつでしょ?」 「加圧トレーニング的なものでしょ?」
もし、あなたの認識がこのレベルで止まっているとしたら、それは非常にもったいない。まるで、スマホを「ただの電話ができる機械」と言っているようなものです。
BFR(Blood Flow Restriction:血流制限)トレーニングの本質は、「血を止める」ことではありません。「血流を適度に制限することで、筋肉内を『特殊な環境』にする」ことなのです。
この「特殊な環境」こそが、軽い重さでも筋肉が劇的に成長する魔法の正体です。 では、ベルトを巻いたその先で、体の中では一体何が起きているのか? 2つの大きなドラマが進行しています。
筋肉には大きく分けて2種類の繊維があることは、トレーナーの皆さんならご存知ですよね。 持久力はあるけど大きくならない「遅筋(赤筋)」と、瞬発力があり大きく成長する「速筋(白筋)」です。
通常、軽いダンベル(最大筋力の20〜30%程度)でトレーニングをした場合、人間の体は「省エネモード」で動きます。つまり、遅筋だけを使って楽に運動をこなそうとするのです。 速筋を動員するには、本来なら重たいバーベルを持って、脳に「これは非常事態だ!総動員しろ!」と命令させる必要があります。
ところが、BFRベルトを巻くとどうなるか。 ベルトで静脈(心臓に戻る血流)を制限することで、筋肉の中に血液が溜まっていきます。すると、筋肉内は酸素不足の状態になります。 酸素をエネルギー源として動く「遅筋」は、酸素が来ないので「もう無理です!動きません!」と、すぐに悲鳴を上げて活動を停止してしまいます。
すると脳はどうするか? 「おい、軽い負荷だけど、遅筋がバテたぞ。緊急事態だ、速筋を出動させろ!」
と勘違いを起こすのです。 これがBFRのすごいところです。「軽い重さしか持っていないのに、脳が『重いものを持っている』と錯覚し、普段は眠っている速筋を強制的に働かせる」のです。
これを生理学的には「サイズの原理(サイズの法則)の例外」なんて呼びますが、お客さんに説明する時はこう言ってあげてください。
「軽い重さでも、プロレスラーが重いバーベルを持ち上げているのと同じ状態を、筋肉の中で作り出しているんですよ」と。
関節には優しい重さなのに、筋肉にはハードな刺激が入る。これが「低負荷・高効果」のカラクリの一つ目です。
もう一つのドラマは、「化学的ストレス」と呼ばれるものです。
ベルトを巻いてトレーニングをすると、筋肉から出る血液(静脈)の流れが制限されているため、筋肉の中に代謝産物(乳酸など)が猛烈な勢いで溜まっていきます。 通常なら血流に乗って流されていくはずの、いわば「筋肉の工場排水」が、出口を塞がれているためにパンパンに溜まるイメージです。
トレーニング中、筋肉が熱く焼け付くような感覚(バーン感)を感じるのはこのためです。
筋肉の中が乳酸まみれになると、筋肉内のセンサーがそれを感知し、脳の視床下部という指令センターに強烈な信号を送ります。 「筋肉の中が大変なことになっています!修復部隊を送ってください!」
このSOSを受け取った脳は、脳下垂体から「成長ホルモン」を大量に分泌させます。 その量は、安静時の最大で約290倍にもなると言われています。
成長ホルモンは、筋肉の合成を助けるだけではありません。 脂肪の燃焼を促進し、肌のターンオーバーを早め、骨を丈夫にする。まさに「若返りホルモン」です。
これが、BFRトレーニングが単なる筋肥大メソッドにとどまらず、「アンチエイジング」や「ダイエット」の切り札として女性や高齢者に絶大な人気を誇る理由です。
「ただベルトを締めている」のではありません。 「体内のホルモンタンクの蛇口を、意図的に全開にしている」のです。
ここまで読んで、「なんだ、意外とシンプルだな」と思われたかもしれません。 そうです。理論自体はシンプルなんです。
しかし、シンプルだからこそ、奥が深い。 「どの位置に巻くか」「どのくらいの圧力が最適か」「どのタイミングで外すか」。 この設定を間違えると、効果が出ないばかりか、めまいや皮下出血などのトラブルに繋がります。
最近のBFRトレーナーズ協会のコラムが難しくなっているのは、それだけ研究が進み、より安全で効果的な方法が細分化されてきた証拠でもあります。 でも、安心してください。私が担当する講座では、難しい論文を読み上げるようなことはしません。
「なぜ、ここでこの圧設定なのか?」 「お客さんが『キツイ』と言った時、どう声をかければ頑張れるのか?」 「安全マージンをどこに取るか?」
そういった、現場で明日から使える「知恵」としての基本を叩き込みます。
私のBFRトレーナープロ資格取得講座は、正直に言いますが、座学だけで終わる退屈な講義ではありません。 私、澤木一貴がトレーナーとして必要な周辺情報も交えて有意義な時間にします!
教科書に載っている理論はしっかり押さえつつ、 「じゃあ、これをファンクショナルトレーニングと組み合わせたらどうなる?」 「高齢者のリハビリに使うなら、どんな言葉かけがベスト?」 といった、私の経験に基づいた応用テクニックをバンバン盛り込んで進めていきます。
理論を知っているだけの「頭でっかち」なトレーナーではなく、クライアントの心と体に火をつけることができる「実践者」になってほしい。 だから、講座では私が実際に現場で使っているキューイング(指導の声かけ)や、ちょっとユニークなトレーニング種目も紹介します。
難解な理論を、楽しく、分かりやすく、そして熱く。 それが澤木流の講座です。
BFRという最強のツールを、「ただの道具」として終わらせるか、「魔法の杖」に変えるかは、使い手であるあなた次第です。 基礎理論という土台をしっかり固めて、その上で自由に暴れまわりましょう。
次回は、いよいよ私の得意分野。 「BFR×ファンクショナルトレーニング」の真髄についてお話しします。 ただ座ってアームカールをするだけがBFRじゃない。 「動ける体」を作るためのハイブリッド指導法、楽しみにしていてください。
りません。あなたのトレーナーとしての「ステージ」を変え、競合との不毛な争いから抜け出すための切符を手に入れることです。
BFRトレーニング

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BFRトレーナーズ協会は、安全で的確なトレーニングの指導を行い、正しい知識と技術を持ったトレーナーを育成し、より多くの人たちにその効果を実感してもらえるようBFRトレーニングの普及を目指します。
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