血流制限トレーニングにおける「圧力」はしばしば論議の的となるが、基本的には80mmHg程度の圧力で十分な効果が得られるとされている。しかし最近の知見によると、実は強く締めてもそれほど血流の制限度合いは変わらないようである。23名の被験者を対象に、圧力を動脈圧の40%から80%の間で変更しつつ、血流制限トレーニングを行わせた研究がある。(※1)その結果、40%と80%との間に血流における大きな違いはなかったとされている。研究者はこの結果を受けて「40%動脈圧(80mmHg程度となる)」で行うことにより、不快感が少ない状態で血流トレーニングが効果的にできるだとうとしている。なお加圧を行うベルトについては注意が必要だ。ベルトの幅によって、同じ圧力でも血流の制限度合いが変わってくるのである。また人種でも変わってくるようであり、非ヒスパニック系黒人は白人よりも強い圧力が必要となるようである。(※2)また最近行われたラットによる研究では、80mmHgで脚の血流を制限した状態で電気刺激(EMS)を加えたところ、筋肥大が起こり、タンパク合成が高まっていることが確認されている。(※3)これは特にリハビリにおいて有効になるだろう。ケガでまったく関節を動かせない状態でも、筋肉だけは発達させられるというような状況も不可能ではなくなるかもしれない。精確な圧力、ベルト幅、人種による矯正、電気刺激の追加など、血流制限トレーニングにはさまざまなブラッシュアップが今後も行われ、最適化されていくことだろう。※1:Effect of Cuff Pressure on Blood Flow during Blood Flow-restricted Rest and Exercise.Med Sci Sports Exerc. 2019 Sep 16. doi: 10.1249/MSS.0000000000002156.※2:The Influence of Cuff Width, Sex, and Race on Arterial Occlusion: Implications for Blood Flow Restriction Research.Sports Med. 2016 Jun;46(6):913-21. doi: 10.1007/s40279-016-0473-5.※3:Effects of combined treatment with blood flow restriction and low current electrical stimulation on muscle hypertrophy in rats.J Appl Physiol (1985). 2019 Sep 26. doi: 10.1152/japplphysiol.00070.2019.