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高齢者は「ハンバーガー」を食べよう

高齢者は「ハンバーガー」を食べよう

高齢者は「ハンバーガー」を食べよう

自炊だけが健康な食事ではない

「高齢者がハンバーガーなんて食べて大丈夫なの?」。このタイトルを見て、そう思った方も多いのではないでしょうか。

ハンバーガーといえば、ファストフード。「脂質が多い」「カロリーが高い」「塩分が多い」「野菜が少ない」「高齢者は食べないほうがいい」。そんなイメージが一般的です。確かに、ハンバーガーばかりを食べる生活が健康的だとは言えません。

しかし、ここで一度考えてみてほしいのです。

「ハンバーガー」と「一人暮らしの高齢者が自宅で作っている食事」を比べたら、本当にいつでも自炊のほうが健康なのでしょうか?

実は、そうとは限りません。
高齢者の食事を考えるときには、「手作りかどうか」よりも、必要なエネルギーとタンパク質をきちんと摂れているか、さまざまな食品を食べられているか、そして毎日無理なく食べ続けられるかを見る必要があります。
今回は、あえて「高齢者とハンバーガー」という組み合わせで考えてみたいと思います。

高齢者にとって怖いのは「食べ過ぎ」だけではない

健康というと、私たちはどうしても「太らないこと」を考えます。カロリーを減らす、脂質を減らす、甘いものを控える、塩分を減らす。もちろん、生活習慣病の予防という観点では重要です。

ところが、高齢者になると事情が少し変わってきます。
厚生労働省によると、65歳以上でBMI20kg/m²以下の「低栄養傾向」に該当する人は、男性12.2%、女性22.4%です。特に高齢になるほど、低栄養への注意が必要になります。

つまり、高齢者に対して「カロリーを減らしましょう」「脂っこいものはやめましょう」「粗食が一番です」とだけ言ってしまうと、かえって問題になることがあります。

食べる量そのものが減っている人に、さらに食事制限をしてしまう可能性があるからです。

高齢者の健康づくりでは、「食べ過ぎを防ぐ」だけでなく、「必要なものをきちんと食べる」という視点も欠かせません。

埼玉県の調査が示した、一人暮らし高齢者の食生活

ここで、非常に興味深い調査があります。

2013年、埼玉県のある市で、65~89歳の一人暮らし高齢者を対象に、食品摂取の多様性について調べた研究が行われました。住民基本台帳上の一人暮らし高齢者4,348人に調査票を送り、2,591人から回答を得ています。そのうち、実質的に一人暮らしではない人などを除いた1,043人が分析対象となりました。

この研究では、「食品摂取の多様性得点」という指標が使われています。

これは、肉類、魚介類、卵、牛乳・乳製品、大豆製品、緑黄色野菜、海藻類、果物、いも類、油脂類という10の食品群について、毎日食べているかどうかを点数化したものです。

そして、この研究で非常に驚く結果が出ています。
食品摂取の多様性得点が3点以下だった人は、男性で76.3%、女性で55.5%に達していました。つまり、この調査の一人暮らし高齢者では、食品摂取の多様性が低い人が決して少なくなかったのです。

もちろん、これは2013年に埼玉県の一つの自治体で行われた研究ですから、「現在の日本の一人暮らし高齢者の76.3%が栄養不足である」という意味ではありません。

しかし、非常に重要なことを示しています。

一人暮らしの高齢者では、「自分で食事を作っているか」だけではなく、「毎日、さまざまな食品を食べられているか」を見る必要があるということです。

「自炊している=栄養バランスが良い」ではない

「自炊」という言葉には、健康的なイメージがあります。

自分で食材を買って、自分で料理をする。外食よりも塩分や油を調整できる。確かに、そのメリットはあります。

しかし、一人暮らしの高齢者にとって、毎日の自炊は簡単なことではありません。

スーパーへ買い物に行く。重い荷物を持って帰る。野菜を洗う。魚を焼く。肉を調理する。一人分の料理を作る。余った食材を保存する。そして食べ終わったら、食器を洗う。

これを毎日繰り返すのです。

「今日は面倒だから、うどんだけでいいか」「朝はパンだけでいい」「夕食はご飯と漬物で済ませよう」という日が増えても、決して不思議ではありません。

実際、先ほどの埼玉県の研究では、「食料品の買い物が大変」と感じている一人暮らし高齢者ほど、食品摂取の多様性が低い傾向が確認されています。

買い物を「少し大変」「とても大変」と感じる人は、「とても容易」と感じる人に比べて、食品摂取の多様性得点が3点以下になる可能性が、男性では調整オッズ比4.00、女性では2.24でした。

これは非常に重要なポイントです。

「何を作るか」以前に、「いろいろな食品を買いに行けるか」という問題があるのです。

「ちゃんと自炊しているのに、タンパク質が足りない」という問題

例えば、こんな食事を想像してください。
朝食は食パンとコーヒー。昼食はうどん。夕食は白米、味噌汁、漬物。

本人は毎日、自宅で食事を作っています。
しかし、肉、魚、卵、大豆製品、乳製品などのタンパク質源が少なければ、筋肉を維持するための栄養が不足してしまう可能性があります。

さらに、野菜、果物、海藻、いも類なども十分に食べていなければ、食品摂取の多様性という点でも問題が生じます。

つまり、
「自炊しているかどうか」と「栄養バランスが良いかどうか」は別問題です。

ここを混同してはいけません。

マクドナルドのハンバーガーは、本当に「栄養がない」のか?

では、ここでハンバーガーを見てみましょう。
例えば、マクドナルドのハンバーガー1個は、公式の栄養成分によると、エネルギー259kcal、タンパク質13.0g、脂質9.5g、炭水化物30.3g、食塩相当量1.4gです。

もちろん、これだけで完璧な食事とは言えません。野菜や食物繊維は十分ではありませんし、食塩にも注意が必要です。

しかし、少なくとも「ハンバーガーにはカロリーしかなく、栄養がない」というイメージは正確ではありません。
パンから炭水化物、牛肉のパティからタンパク質、そして脂質も含まれています。さらに玉ねぎやピクルスも入っています。

チーズバーガーになると310kcal、タンパク質15.9g。ダブルチーズバーガーなら459kcal、タンパク質26.4gです。

もちろん、ダブルチーズバーガーを「健康食品」と言っているわけではありません。

重要なのは、ハンバーガーも複数の栄養素を含む「食品」であるという当たり前の事実です。

牛丼と比べると、さらに面白い

では、日本人にとって「普通の食事」というイメージが強い牛丼と比べてみましょう。
例えば、吉野家の牛丼・並盛は、エネルギー約600kcal、タンパク質約20g程度です。

一方、マクドナルドのハンバーガー1個は259kcal、タンパク質13.0gです。
数字だけを見ると、牛丼のほうがエネルギーもタンパク質も多い。当然です。そもそも、ハンバーガー1個と、ご飯をたっぷり含んだ牛丼1杯では、食事の量が違います。

そこで、ハンバーガーを2個食べたとすると、単純計算で518kcal、タンパク質26.0g、脂質19.0g、炭水化物60.6gになります。

単純比較ではありますが、牛丼並盛とかなり近い「1食分」のエネルギーとタンパク質量になります。

ここから見えてくるのは、

「ハンバーガーはジャンクフード、牛丼は健康的な食事」という単純な線引きには無理がある
ということです。
牛丼もハンバーガーも、それだけで1日の栄養をすべて満たすものではありません。大切なのは、その食品を含めた食事全体です。

「ジャンクフード」という言葉にも注意したい

そもそも「ジャンクフード」には、医学的な厳密な定義があるわけではありません。

一般的には、エネルギー、脂質、糖類、食塩などに偏り、ビタミンやミネラル、食物繊維などが少ない食品を指して使われます。

ところが、ハンバーガーは、ポテトチップスや砂糖入り飲料とは少し違います。牛肉、パン、野菜など複数の食材から構成され、タンパク質も含んでいます。だからこそ、「ファストフードだから栄養的に悪い」と決めつけるのではなく、

「何を、どのくらい、何と組み合わせて食べるのか」
を見るべきなのです。

高齢者の場合、「食べられること」そのものに価値がある

もう一つ、非常に重要な問題があります。
それは、「食べたいと思えるか」です。

一人暮らしの高齢者に、「毎日、バランスの良い食事を自炊してください」と言うのは簡単です。
しかし、本人にとって、それが大きな負担になっていたらどうでしょう。

料理が面倒になる。買い物に行くのも面倒になる。食事を作るのも面倒になる。そして、最終的には食事そのものを簡単に済ませるようになる。

こうして食事量が減れば、低栄養につながる可能性があります。
だからこそ、「ちゃんとした食事を作らなければならない」という考え方だけではなく、「本人が無理なく食べられる方法を増やす」という発想が必要なのです。

ハンバーガーは「食事の選択肢」として考えればいい

例えば、「今日は料理をする気力がない」「冷蔵庫に食材がない」「一人分だけ作るのが面倒」という日があったとします。

そんな日に、「ハンバーガー+サラダ+無糖飲料」という選択をする。

これを「不健康な食事」と一刀両断する必要があるでしょうか。

むしろ、「何も食べない」「パンだけで済ませる」「お菓子だけ食べる」という選択よりも、タンパク質とエネルギーを確保できる可能性があります。

もちろん、塩分や脂質などについて個別の注意が必要な人もいます。糖尿病、腎臓病、高血圧、心不全などの疾患がある場合には、医師や管理栄養士の指示を優先すべきです。

ハンバーガーを選択肢にすることと、何でも好きなだけ食べていいということは、まったく違います。

「食べること」と「運動すること」はセットで考える

ここは、BFRトレーナーにもぜひ知っておいてほしいポイントです。

高齢者の身体づくりでは、運動だけでは十分ではありません。

BFRトレーニングなどで身体に刺激を与え、その身体を維持するために、十分なエネルギーとタンパク質を摂る。この両方が大切です。

「太りたくないから肉を食べない」「脂質が怖いから食事量を減らす」「健康のために粗食にする」という生活が、結果的に筋肉量の低下を招いてしまうこともあります。

高齢者の健康づくりでは、「減らす健康」から「必要なものをきちんと摂る健康」へ、発想を変えることも必要なのです。

もちろん、野菜も忘れない

ここまで読むと、「じゃあ、高齢者はハンバーガーだけ食べればいいの?」と思われるかもしれません。

もちろん違います。

ハンバーガーだけでは、野菜や食物繊維、ビタミン、ミネラルなどが不足しやすい。だからこそ、組み合わせが重要です。

例えば、ハンバーガーにサラダを加える。飲み物を牛乳や無糖飲料にする。別の食事では魚、豆腐、卵、野菜、果物などを食べる。毎回すべてを完璧に揃える必要はありません。

1食だけを完璧にするのではなく、1日、あるいは数日単位で栄養を考える。
このほうが、現実の生活には合っています。

高齢者に必要なのは「禁止」より「選択肢」

高齢者の健康を考えるとき、「これは食べてはいけない」「これは体に悪い」という食品の禁止リストを増やしていくのは、必ずしも良い方法ではありません。

それよりも、「今日は何なら食べられますか?」「肉は食べられますか?」「魚はどうですか?」「卵や牛乳なら食べられますか?」「外食なら何を選びますか?」と、食べられるもの、続けられる方法を増やしていくことが大切です。

特に一人暮らしの高齢者では、食事を準備すること自体が負担になる場合があります。

だったら、惣菜でもいい。配食でもいい。コンビニでもいい。外食でもいい。そして、ときにはハンバーガーでもいい。

重要なのは、

「その人が必要な栄養を、無理なく、継続的に摂れているか」

なのです。

「高齢者はハンバーガーを食べよう」の本当の意味

ここまで読んでいただいた方には、このタイトルの意味がお分かりいただけると思います。

私たちは、「ハンバーガーを食べれば健康になる」と言っているわけではありません。

そうではなく、
「ハンバーガーだから不健康、と決めつけるのはやめませんか?」
という提案です。

自炊していることは素晴らしい。野菜を食べることも大切。魚や大豆製品を食べることも大切。塩分や脂質に気をつけることも大切です。

しかし、それと同じくらい、「ちゃんと食べること」も大切です。
特に一人暮らしの高齢者では、買い物や調理の負担が、食品摂取の多様性を低下させる要因になり得ることが、埼玉県の研究からも示唆されています。

だからこそ、「自炊しているから大丈夫」と安心するのではなく、実際に何種類の食品を食べているのか、肉や魚、卵、大豆製品などを摂れているのか、食事量そのものが減っていないかを確認することが大切です。

そして、BFRトレーナーとして高齢者の運動をサポートするのであれば、運動だけを見るのではなく、「最近、ちゃんと食べていますか?」と聞いてみてください。

「何を食べたらいいか分からない」と言われたら、特定の食品を一方的に否定するのではなく、その人の生活環境や食欲、調理能力、買い物の負担なども考えながら、無理なく続けられる方法を一緒に考える。

それも、健康を支える大切なサポートです。
そして、もしその日の選択肢が、「何も食べない」のか「ハンバーガーを1個食べる」のか、その二つしかないとしたら――。

私は、迷わずハンバーガーを食べてほしいと思います。
もちろん、できればサラダや牛乳、果物なども加えてほしい。でも、まずは食べる。身体を動かす。そして、また食べる。

高齢者の健康づくりで本当に大切なのは、「完璧な食事」を一日だけ実践することではありません。

毎日の生活の中で、必要な栄養を摂り、身体を動かし、それを無理なく続けること。その中に、ハンバーガーがあってもいいのです。

むしろ私たちは、「健康のために食べてはいけないもの」を増やすのではなく、「健康のために、これなら食べられる」という選択肢を増やしていくことを考えるべきではないでしょうか。

高齢者は「ハンバーガー」を食べよう。
この少し挑発的なタイトルが、実は「高齢者の食事を、もっと現実的に考えてみよう」というメッセージなのです。

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