一般的にウォームアップは体温を高めて酵素の活性を活発にしたり、神経伝達物質を放出しやすくしたりすることによって、その後における競技能力を改善することを可能とします。また別の理由として、酸素の代謝、エネルギー化を高めるという理由もあります。BFRトレーニングはヘビーなウェイトトレーニングの「締め」として行われることが大半ですが、まれに血流制限による「やる気改善」を期待してトレーニングの最初に軽く行うこともあります。これはアドレナリンの上昇を狙っています。しかし血流を制限すると、カラダはより少ない酸素でやっていこうとします。つまり酸素の利用効率を高めようとするわけです。それを利用して、ウォームアップとして血流制限することにより、その後のパフォーマンスの向上を期待できるのではないかという推論のもと、次のような実験が行われました。15名のアメリカンフットボーラーを対象に、スプリントのテスト(20mダッシュを12本、インターバルは20秒)を行いました。普通のウォームアップ後にやった場合と、血流制限を行った場合とで比較しました。(※1)血流制限は最強を10とした場合、7か3程度の圧力として15分間を両脚に行いました。その結果、スプリントのタイムや速度、タイム低下スコアなどについては明らかな差は認められませんでしたが、腓腹筋の酸素飽和度や総ヘモグロビン濃度については血流制限を行った場合において、明らかな改善が認められたのです。今回は脚のみの血流制限でしたが、一般的なウォームアップは全身的に行うものです。上半身の血流制限を加えた場合や、一般的ウォームアップに追加して脚の血流制限を行った場合は、さらなる効果が期待できるかもしれません。また、今回の研究では血流制限した状態で脚を動かさず、静止したままの状態でした。それで効果があったということは、例えば腕の血流制限を行った状態で軽くエアロバイクを漕いだり、脚の血流制限を行った状態でフォームローラーを使ってほぐしたり、などのバリエーションも考えられそうです。今後の研究展開が望まれるところです。※1:Blood-Flow Restricted Warm-Up Alters Muscle Hemodynamics and Oxygenation during Repeated Sprints in American Football Players.Sports (Basel). 2019 May 21;7(5). pii: E121. doi: 10.3390/sports7050121.