メジャーリーガーとして活躍するダルビッシュ有選手や大谷翔平選手が、肘の靭帯(尺側側副靭帯)を損傷し、その再建手術として知られる「トミー・ジョン手術」を受けたことは、多くの方がご存じでしょう。特に大谷選手は、靭帯再建手術に加え、肘をさらに補強するために人工靭帯を移植する「ハイブリッド手術」を受けています。このように、トップアスリートが手術後も競技を続けるためには、手術自体だけでなく、術後のリハビリやその後のトレーニングが極めて重要となります。その中で注目されているのが、BFR(血流制限)トレーニングの活用です。筋肥大やリハビリの分野で幅広く知られる山本義徳先生は、術後のダルビッシュ選手のリハビリにBFRトレーニングを導入しました。このアプローチは、手術後の選手が身体の機能を安全かつ効率的に回復させるために大きな役割を果たしました。日本とメジャーリーグの違いが投手に与える影響メジャーリーグの投手が直面する環境は、日本のプロ野球とは大きく異なります。例えば、メジャーリーグでは試合数が多く、投球機会も増えるため、肩や肘にかかる負担が非常に大きくなります。こうした環境の中で、選手たちは短時間で効率的なウォームアップを求められることが多く、肩や肘を酷使しない工夫が求められます。登板前のBFRトレーニングの活用こうした背景の中で、BFRトレーニングは新たなウォームアップの手法として注目されています。具体的には、登板前に腕にBFRトレーニングベルトを装着し、約10分間軽く投球を行うことで以下の効果が期待できます。血行促進血流制限後の解除により、腕全体の血行が促進されます。これにより、筋肉や靭帯への酸素供給が向上し、パフォーマンスが向上します。稼働域の拡大投球に必要な肩や肘の稼働域が広がり、スムーズな動作が可能になります。神経系の活性化軽い負荷でのトレーニングが神経系に適度な刺激を与え、反応速度や筋肉の制御力が向上します。これらの効果により、短時間で効率的にウォーミングアップを行うことができ、選手への負担を最小限に抑えつつ準備を整えることが可能となります。選手生命を守るための選択肢BFRトレーニングは、単なるリハビリやトレーニング手法ではなく、選手生命を長く保つための重要なツールとなり得ます。特に、投手のように繊細な体の部位に負担がかかる競技では、その重要性はさらに高まります。これからのスポーツの現場において、BFRトレーニングはウォームアップの新しいスタンダードになる可能性を秘めています。