コラム
2025/01/09

ACL再建術後リハビリにおけるBFRトレーニングの可能性と女性アスリートのケガ予防
膝前十字靭帯(ACL)再建術は、特にスポーツを行う人々にとって一般的な手術です。ACLの損傷は男性にも女性にも発生しますが、研究によると女性アスリートの発生率は男性の約2~8倍と言われています。この背景には、生物学的、運動力学的、環境的な要因が複雑に絡み合っています。本稿では、女性アスリートにおけるACL損傷の特徴と、その再建術後のリハビリにおけるBFRトレーニングの役割について解説します。
女性アスリートが男性よりもACL損傷を受けやすい理由は、以下のような複数の要因が挙げられます。
骨盤幅と股関節角度(Q角)の違い
女性は骨盤が広いため、股関節の角度が大きく、膝にかかる力が増える傾向があります。これにより、急激な方向転換やジャンプ着地時に膝関節が不安定になりやすいと言われています。
ホルモンの影響
エストロゲンなどのホルモンが靭帯の弾性や強度に影響を与える可能性があります。特に月経周期の特定の時期に、靭帯が緩みやすくなるとの報告があります。
筋力のバランス
女性は男性に比べて、大腿四頭筋に対するハムストリングスの筋力比が低いことが多く、このアンバランスが膝の安定性を損なう要因となる可能性があります。
再建術後のリハビリは、膝の機能回復と再発予防の両方を目的としています。しかし、特に女性アスリートの場合、以下の課題が見られます。
筋力回復の難しさ
女性は生物学的に筋肉量が少なく、リハビリ中に筋力を回復させるのに時間がかかることがあります。
精神的なストレス
ケガや手術後のリハビリは、アスリートにとって精神的な負担が大きく、復帰への不安感を抱えることが少なくありません。
これらの課題に対応するために、BFRトレーニングが注目されています。
BFRトレーニングは、低負荷のエクササイズでも筋力を効果的に向上させることができる画期的な手法です。具体的なメリットは以下の通りです。
低負荷で安全に筋力を向上
BFRトレーニングでは、通常のリハビリで推奨される高負荷トレーニングの代わりに、約20~40%の低負荷でトレーニングが行えます。これにより、膝への負担を軽減しつつ、筋力の回復が可能です。
筋肥大の促進
血流制限によって、筋肉内の代謝産物(乳酸など)が蓄積し、これが筋肥大を促進する引き金となります。女性アスリートにとって、筋肉量の増加は膝の安定性向上に大きく寄与します。
心理的効果
BFRトレーニングは、従来のリハビリに比べて短時間で成果を感じやすいため、患者のモチベーションを高める効果も期待できます。
BFRトレーニングベルトの装着と圧力設定
BFRトレーニングベルトを大腿部に装着し、個々の患者に適した圧力で血流を制限します。圧力は通常、動脈圧の40~80%程度に設定されます。
低負荷トレーニングの実施
スクワットやレッグエクステンションなどの基本的なエクササイズを低負荷(1RMの20~40%)で行います。
頻度と期間
週2~3回の頻度で約6~8週間継続することが効果的とされています。
BFRトレーニングは安全性が高いとされていますが、以下の点に注意が必要です。
専門家の指導が必要
不適切な圧力設定や運動方法はリスクを伴うため、必ず専門家の指導のもとで行う必要があります。
禁忌事項の確認
血栓症や動脈疾患の既往歴がある場合、BFRトレーニングは禁忌となる可能性があります。事前に医師の確認が必要です。
女性アスリートのACL損傷は発生率が高く、再建術後のリハビリも男性と比較して特有の課題を抱えています。その中で、BFRトレーニングは膝への負担を最小限に抑えつつ筋力を効果的に回復させる有用な手法です。特に女性アスリートにおいては、筋力のアンバランスの是正や再発予防、さらには心理的な不安の軽減に寄与する可能性があります。
BFRトレーニングを適切に導入することで、女性アスリートのリハビリがより効果的で安全なものとなり、競技復帰に向けた道が切り開かれるでしょう。
リハビリ

多発性硬化症(MS)とBFR:最新の世界エビデンスが示す「脳と身体」への新たな希望
以前、当協会のコラム(著:山本義徳先生)で「多発性硬化症(MS:Multiple Sclerosis)に対するBFRトレーニングの有効性」について触れたことを覚えていらっしゃるでしょうか?あれから数年...
齊木 英人

BFRトレーニングがパーキンソン病患者の「動ける身体」を取り戻す可能性
私たちBFRトレーナーは、この革新的なトレーニングメソッドが、低負荷・短時間で高負荷トレーニングに匹敵する効果をもたらすことを深く理解しています。その恩恵は、アスリートのパフォーマンス向上や健常者のボ...
齊木 英人

BFRの新たな可能性:パーキンソン病患者の「むずむず脚症候群(RLS)」
BFRの新たな可能性:パーキンソン病患者の「むずむず脚症候群(RLS)」はなぜ改善したのか?BFRトレーナーズ協会の皆様、日々の指導、誠にお疲れ様です。私たちBFRトレーナーは、BFRトレーニングが低...
齊木 英人

BFRトレーニングが拓く、怪我からの復帰とパフォーマンス向上への道
プロアスリートから週末にスポーツを楽しむ人まで、スポーツ愛好家にとって、怪我は避けて通れない大きな壁です。特に、筋肉や腱の損傷は、長期にわたるリハビリテーションを必要とし、競技への復帰を困難にさせます...
齊木 英人

骨折のリハビリテーション:BFRトレーニングという新しい選択肢
骨折は、日常生活に大きな影響を与える怪我であり、長期のリハビリテーションを必要とします。ギプスや装具による固定期間は、患部の筋力や機能の著しい低下を招き、高負荷トレーニングが再開できるまでの間、患者は...
齊木 英人

バレエにおける子どもの障害とBFRトレーニングによるケア
バレエにおける子どもの障害とBFRトレーニングによるケア現在、プロとして活躍する多くの日本人ダンサーが、3歳から4歳の頃にバレエを始めています。これはロシアや英国などのバレエ先進国に比べても非常に早い...
里見 悦郎
通常のトレーニングには1RM(1回持ち上げることが限界の重さ)の60%以上の重さを必要としていますが、BFRトレーニングでは1RMの20%程度の重さで効果を得るとができます。
BFRトレーナーズ協会は、安全で的確なトレーニングの指導を行い、正しい知識と技術を持ったトレーナーを育成し、より多くの人たちにその効果を実感してもらえるようBFRトレーニングの普及を目指します。
© BFR Trainers Institute 2025