近年、バレエやダンスなどのパフォーマンススポーツにおいて、障害の発生率が高まっていることが問題視されています。特に若年層のダンサーは成長期にあり、外科的手術を避けたいと考えるケースが多く、治療方法の選択が難しいのが現状です。そこで注目されているのがBFR(Blood Flow Restriction)トレーニングです。本コラムでは、BFRトレーニングを用いたダンス障害の治療効果とリハビリの可能性について解説します。ダンス障害の特徴バレエやダンスでは、関節や筋肉への負担が大きく、特に腰痛、膝関節炎、アキレス腱炎、脊椎分離症などの障害が多く見られます。従来の治療法では安静や外科手術が一般的でしたが、これらはダンサーのキャリアに大きな影響を与えかねません。BFRトレーニングとはBFRトレーニングとは、四肢の付け根に専用のBFRベルトを巻き、血流を制限しながら低強度のトレーニングを行う手法です。血流を制限することで、成長ホルモン(GH)の分泌が通常のよりも増加し、筋肉の修復や痛みの軽減を促進することが知られています。治験結果から見るBFRトレーニングの効果ある治験では、膝関節の手術後、痛みを感じ続けていたダンサーに対して、BFRトレーニングを用いたリハビリを実施しました。具体的には、上肢に5分間、下肢に20分間圧迫帯を装着しながら軽度の運動を行う処方です。その結果、10回目のセッション終了時には痛みが完全に消失し、ジャンプや深い屈曲動作も支障なく行えるようになりました。この治験では、他にも腰痛やアキレス腱炎を持つダンサー12名に対し、同様のBFRトレーニングを行った結果、全員の痛みが大幅に軽減し、最終的には日常生活やダンス活動に支障がなくなりました。BFRトレーニングがもたらす回復促進のメカニズムBFRトレーニングによる成長ホルモンの分泌増加は、筋繊維の修復促進と血流改善をもたらします。また、低酸素環境下でのトレーニングは、筋肉の動員数を増やし、通常より短期間で筋力と柔軟性の回復を促進します。特にダンサーの場合、手術を回避しながら痛みの軽減と機能回復を目指す手法として、BFRトレーニングは非常に有効な手段となり得ます。今後の可能性と展望今後、BFRトレーニングはダンス障害だけでなく、スポーツ全般のリハビリや、高齢者の膝痛などへの応用も期待されています。また、BFRトレーニングの導入によって、手術を回避しながら早期のパフォーマンス復帰が可能となる点は、ダンサーやアスリートにとって大きな利点です。BFRトレーニングの普及は、今後のスポーツ医療やリハビリ分野において新たな可能性を開くものと言えるでしょう。BFRトレーナーズ協会では、今後も最新の研究成果を活用し、さらなる普及と認知拡大を目指してまいります。