コラム
2025/04/13

近年、健康意識の高まりとともに、様々なトレーニング方法が注目を集めています。その中でも、血流制限(BFR)トレーニングは、低負荷でありながら高い効果が期待できることから、多くの方に支持されています。今回は、このBFRトレーニングが、国民病とも言える糖尿病に対してどのような効果を発揮するのか、最新の研究データとともにお伝えしていきます。
厚生労働省の令和2年(2020年)患者調査によると、日本国内で糖尿病と診断され治療を受けている患者さんの総数はなんと579万1千人にのぼります。これは、1996年以降増減を繰り返しながらも、全体的には増加傾向にあり、特に高齢化が進む現代において、糖尿病対策は喫緊の課題と言えるでしょう。
年代別に見ると、男女ともに60代以上で糖尿病患者の割合が高く、男性では50代から10%を超えるなど、中年期以降の発症が多いことがわかります。
地域別に見ると、糖尿病患者の割合が多い都道府県として、過去のデータでは青森県、香川県、岩手県などが挙げられています。これは、気候や食生活、運動習慣など、地域ごとの生活習慣が影響していると考えられます。
では、糖尿病とは一体どのような病気なのでしょうか?
原因: 糖尿病は、血液中のブドウ糖(血糖)の濃度が慢性的に高くなる病気です。その主な原因は、インスリンというホルモンの作用不足や分泌不足です。インスリンは、血糖値を下げる働きを持つホルモンで、膵臓から分泌されます。
糖尿病は大きく分けて1型糖尿病と2型糖尿病があります。
1型糖尿病: 自己免疫疾患などにより、インスリンを分泌する膵臓の細胞が破壊され、インスリンの分泌量が極端に少なくなることで発症します。
2型糖尿病: インスリンの分泌量が不足したり、インスリンが十分に作用しなくなる(インスリン抵抗性)ことで発症します。生活習慣病との関連が深く、遺伝的な要因に加えて、過食、運動不足、肥満、ストレスなどが発症に関わるとされています。
治療法: 糖尿病の治療は、血糖値を適切にコントロールし、合併症を防ぐことを目的として行われます。主な治療法には以下のものがあります。
食事療法: 適切なエネルギー摂取量とバランスの取れた食事を心がけることが基本です。
運動療法: 血糖値を下げる効果や、インスリンの働きを高める効果が期待できます。
薬物療法: インスリン注射や、血糖値を下げる飲み薬などが用いられます。
糖尿病を予防するためには、日々の生活習慣を見直すことが重要です。
バランスの取れた食事: 糖質や脂質の過剰摂取を避け、野菜や食物繊維を積極的に摂るように心がけましょう。
適度な運動習慣: ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動や、筋力トレーニングを習慣にしましょう。
肥満の予防・解消: 適切な食事と運動によって、適正体重を維持することが大切です。
禁煙・節酒: 喫煙はインスリン抵抗性を高める可能性があり、過度の飲酒は血糖コントロールを悪化させる可能性があります。
定期的な健康診断: 早期発見・早期治療のためにも、定期的に健康診断を受けましょう。
近年、海外の研究において、BFRトレーニングが糖尿病の改善に役立つ可能性が示唆されています。
例えば、Annals of Applied Sport Scienceに掲載された研究では、BFRウォーキングトレーニングが2型糖尿病患者のインスリン感受性と有酸素能力を著しく向上させることが報告されています。インスリン感受性が向上するということは、血糖値を下げるインスリンの効果が高まるため、血糖コントロールの改善に繋がります。
また、別の研究では、BFR抵抗運動が2型糖尿病患者の筋力と血糖コントロールを改善する可能性が示唆されています。筋肉は血糖の主な消費器官の一つであるため、筋力が増強することで、より効率的に血糖値を下げることが期待できます。
さらに、PubMedに掲載された研究では、BFR抵抗運動が中年期の2型糖尿病患者において、代謝異常、血圧、肥満を改善し、アテローム性動脈硬化性心血管疾患のリスクを低減する可能性が報告されています。これは、糖尿病患者にとって非常に重要なポイントです。
これらの海外の研究成果は、BFRトレーニングが、糖尿病患者にとって安全かつ効果的な運動療法の選択肢となり得る可能性を示唆しています。特に、高強度の運動が難しいと感じる方や、関節に不安がある方にとって、低負荷で高い効果が期待できるBFRトレーニングは、新たな希望となるかもしれません。
今回は、日本における糖尿病の現状、糖尿病の原因と治療法、そしてBFRトレーニングが糖尿病に有効である可能性について、海外の最新研究を交えながら解説しました。
BFRトレーニングは、適切な方法で行うことで、糖尿病患者さんの血糖コントロールの改善、筋力向上、さらには心血管疾患リスクの低減にも貢献する可能性があります。
BFRトレーナーズ協会の会員の皆様におかれましては、これらの最新情報を踏まえ、より多くの方々の健康をサポートしていただけるよう願っております。糖尿病の方へのBFRトレーニング指導においては、必ず医師の許可を得て、安全に配慮した上で実施するようにしてください。
参考文献
厚生労働省 令和2年(2020年)患者調査
Blood-Flow Restriction Walking: Effects on Insulin Sensitivity and Aerobic Capacity in Type 2 Diabetes - Annals of Applied Sport Science
The effect of blood flow-restrictive resistance training on the risk of atherosclerotic cardiovascular disease in middle-aged patients with type 2 diabetes: a randomized controlled tria 1 l - PubMed
THE EFFECT OF BLOOD-FLOW RESTRICTION WALKS TRAINING ON INSULIN SENSITIVITY AND AEROBIC CAPACITY AMONG TYPE TWO DIABETES - Arab American University
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