疲労の原因と言えば古くから乳酸犯人説が主でしたが、近年になって「乳酸は疲労物質ではなく、むしろエネルギー源だ」とか「筋収縮を担うカルシウムイオンに結合しやすいリン酸が疲労の原因だ」といった説が出てきました。同時に別の説も出てきていて、交感神経が興奮することによって活性酸素が発生し、それが神経細胞内に溜まって細胞にダメージを与えることが疲労の原因であるとの主張もあります。(※1)運動による活性酸素を減らし、疲労を軽減させる物質としてイミダペプチドを(※1)の論文の研究者たちは推しているのですが、それ以外に緑茶カテキンも非常に有望です。16名の学生体操選手を対象に780mgの緑茶カテキンを与えた研究では運動後の酸化ストレスが減っており(※2)、980mgの緑茶カテキンを男性自転車スプリンターに与えた研究でも同様の結果が出ています。(※3)また35名の健康な男性に4週間に渡ってウェイトトレーニングを行わせ、640mgの緑茶カテキンを与えたところ、抗酸化活性が高まって酸化ストレスが減り、筋ダメージが軽減され、筋持久力テストでも良い成績を収めました。(※4)アドレナリンはエネルギーアップや覚醒作用をもたらしますが、緑茶エキスのEGCGにはアドレナリンやノルアドレナリンを分解する酵素((Catechol-O-Methyltransferase)を邪魔する作用があります。そのため、持久力のアップや脂肪燃焼を促進してくれる作用が期待できるのです。特にカフェインと同時に摂取することで、その効果はさらに増加することでしょう。こういった効果を得るためには緑茶カテキンとして一日に600mg程度です。緑茶100mlあたり80~100mgのカテキンが含まれますから、一日に600ml以上の緑茶を飲めば良いということになります。なお、実はもっとも低価格で買える「番茶」に多くのカテキンが含まれることは、意外に知られていません。またカテキンは80℃以上のお湯で溶け出しますので、熱い湯に1分ちょっと入れて煮だすようにすると、多くのカテキンを摂取することができます。玉露のようにぬるい湯で抽出すると、あまりカテキンを摂取できないことは覚えておくといいでしょう。※1:A potential biomarker for fatigue: Oxidative stress and anti-oxidative activity.Biol Psychol. 2016 Jul;118:88-93. doi: 10.1016/j.biopsycho.2016.05.005. Epub 2016 May 17.※2:Influence of green tea catechins on oxidative stress metabolites at rest and during exercise in healthy humans.Nutrition. 2016 Mar;32(3):321-31. doi: 10.1016/j.nut.2015.09.005. Epub 2015 Sep 28.※3:The effect of green tea extract supplementation on exercise-induced oxidative stress parameters in male sprinters.Eur J Nutr. 2015 Aug;54(5):783-91. doi: 10.1007/s00394-014-0757-1. Epub 2014 Aug 14.※4:Green tea extract supplementation gives protection against exercise-induced oxidative damage in healthy men.Nutr Res. 2011 Nov;31(11):813-21. doi: 10.1016/j.nutres.2011.09.020.