私たちの身体のエネルギーとなるのはATPですが、これは主に「電子伝達系」によってつくられます。ミトコンドリアには「複合体」と呼ばれるものがあって、電子が複合体の間を受け渡しされることによって、ATPがつくられるのです。この流れを簡単に追ってみましょう。まず「複合体Ⅰ」や「複合体Ⅱ」は電子をユビキノンに受け渡します。ユビキノンの別名は「酸化型CoQ10」です。そして電子を受け取ったユビキノンは還元されてユビキノールになります。ユビキノールの別名は「還元型CoQ10」です。ユビキノールは「複合体Ⅲ」の働きによってシトクロムcに電子を受け渡し、還元型シトクロムcをつくります。還元型シトクロムcが「複合体Ⅳ」に送られると、酸化されて水がつくられます。このようにCoQ10が働きつつ、複合体の間で電子が受け渡されていきます。このときにプロトンがマトリックス側から内膜の外側に輸送され、内膜の内側と外側の間にプロトンの濃度勾配が産まれます。この濃度勾配を使って、複合体ⅤがATPをつくります。体内における「酸化」とは、電子を引き抜くことです。逆に抗酸化というのは電子を与えることです。ユビキノールは電子を持っているため、それを活性酸素に与えることができます。すると活性酸素を除去できるのです。こうしてエネルギーを作り出したり、抗酸化作用を発揮したりすることによって、CoQ10には様々な効果が期待できます。一般に販売されているCoQ10は酸化型のユビキノンです。しかし体内のCoQ10は、ほとんどがユビキノールです。ユビキノンとしてつくりだしたものに電子を与え、ユビキノールに変換しています。そのためサプリメントとして摂取する場合、ユビキノンではなくユビキノールを選んだ方が効果は高くなります。少々お高くなりますが・・ただユビキノールはユビキノンに比べ、吸収率が8倍も高いとされています。ある報告によれば150mgのユビキノールを摂取した場合、それと同じCoQ10レベルを達成するには1200mgのユビキノンが必要だったとされています。(※1)血中CoQ10レベルが3.5mcg/ml以上を達成することで心臓血管系疾患の予防が期待できます。(※2)ユビキノールを100mg摂取したところ、ピークレベルは6.0mcg/mlまで高まりました。ユビキノンを100mg摂取した場合は2.1mcg/mlまでしか高まらず、8時間後の測定ではユビキノールのほうが3.75倍高い濃度を示したそうです。病気の予防・治療以外にマウスの実験では一日200~300mg程度の摂取によるユビキノールの抗老化作用が示されており(※3)、他にも抗疲労効果やミトコンドリア機能改善など様々な作用が期待できます。※1:Study on safety and bioavailability of ubiquinol (Kaneka QH) after single and 4-week multiple oral administration to healthy volunteers.Regul Toxicol Pharmacol. 2007 Feb;47(1):19-28. Epub 2006 Aug 21※2:Overview of the use of CoQ10 in cardiovascular disease.Biofactors. 1999;9(2-4):273-84.※3:Reduced coenzyme Q10 supplementation decelerates senescence in SAMP1 mice.Exp Gerontol. 2006 Feb;41(2):130-40. Epub 2006 Jan 4.