Part 6では睡眠を深くする栄養ということでテアニンを紹介しました。今回は「タウリン」について解説したいと思います。私たちの身体には「神経」があります。しかし神経というのは長い一本の線があるわけではなく、そのところどころで分断されています。分断されているところにあるのが「神経伝達物質」です。神経伝達物質には「興奮性」のものと「抑制性」のものとがあります。興奮性の神経伝達物質にはアドレナリンやノルアドレナリン、アセチルコリン、グルタミン酸などがあり、これらは活動電位を発生させて神経を興奮させます。逆に抑制性の神経伝達物質にはグリシンやタウリン、GABAなどがあり、これらは活動電位の発生を抑えて神経の興奮を鎮めます。タウリンは主にGABAやグリシン受容体の働きを強くすることによって、神経にたいして抑制的に働きます。タウリンの作用はそれだけではありません。最近発表された報告ではミトコンドリアでの正常なタンパク合成にタウリンが重要な役割を果たしていることが分かりました。(※1)またタウリンを摂取することで筋肉内のタウリン含有量が増加したり、アイソメトリックな筋力が増加したり、脂肪燃焼を促進して体重増加を抑えたり、テストステロンを増加したりといった作用なども期待できます。(※2, ※3)そして抑制性に働くということから、タウリンは睡眠の質の向上にも役立ちます。韓国で肥満女性を対象に行われた研究でも、タウリンが睡眠の質を高めたことが確認されています。(※4)エナジードリンクにはカフェインと同時にタウリンが含まれることが多いのですが、これにはカフェインによる興奮作用が強くなるのを抑える作用が期待されています。カフェインとタウリンを同時に摂取した研究では、タウリンの割合が多くなることで活動量が減少し、睡眠が長くなっています。(※5)タウリンは主に肝臓で合成されていますが、肝硬変などになると肝臓で合成できなくなり、体内のタウリンが減少します。このような場合、筋肉の痙攣が起こりやすくなるのですが、一日に3gのタウリンを投与することによって筋痙攣が抑えられるようになったという報告があります。(※6, ※7)サプリメントで摂取する場合も、これくらいの量を目安にすると良いでしょう。抑制的ということから、トレーニング前ではなくトレーニング後に摂取することをお勧めします。※1:Defective Mitochondrial tRNA Taurine Modification Activates Global Proteostress and Leads to Mitochondrial Disease.Cell Rep. 2018 Jan 9;22(2):482-496. doi: 10.1016/j.celrep.2017.12.051.※2:Antiobesity and hypolipidemic effects of lotus leaf hot water extract with taurine supplementation in rats fed a high fat diet.J Biomed Sci. 2010 Aug 24;17 Suppl 1:S42. doi: 10.1186/1423-0127-17-S1-S42.※3:Taurine supplementation increases skeletal muscle force production and protects muscle function during and after high-frequency in vitro stimulation.J Appl Physiol (1985). 2009 Jul;107(1):144-54. doi: 10.1152/japplphysiol.00040.2009. Epub 2009 May 7.※4:The association among dietary taurine intake, obesity and quality of sleep in korean women.Adv Exp Med Biol. 2015;803:725-33. doi: 10.1007/978-3-319-15126-7_58.※5:Effect of taurine and caffeine on sleep-wake activity in Drosophila melanogaster.Nat Sci Sleep. 2010 Sep 24;2:221-31. doi: 10.2147/NSS.S13034. Print 2010.※6:タウリン投与により筋痙攣が消失した肝硬変の症例※7:肝硬変におけるこむら返りとタウリン投与の効果について