コラム
2025/04/07

BFR(Blood Flow Restriction:血流制限)トレーニングは、低負荷でも高い筋力・筋肥大効果を得られることから、アスリートからリハビリ分野まで幅広く導入されているトレーニング法です。
一方で、「血流制限」という特性上、血栓(けっせん)リスクに対する懸念の声もあるのが現実です。
また、マラソン、トライアスロン、ラグビー、サッカー、水球などの激しいスポーツでも、脱水によって血液がドロドロになり、血栓形成のリスクが高まるケースがあります。
この記事では、BFRトレーニングや激しいスポーツ活動時における血栓リスクの基礎知識と、それを軽減するための方法として注目されるグリセリン摂取の活用法について、科学的視点からわかりやすく解説します。
BFRトレーニングは、腕や脚の根元を専用ベルトで圧迫し、静脈の流れだけを制限してトレーニングを行います。これにより、軽負荷でも高負荷と同等の筋肉への刺激が得られます。
一方、血流を一時的に制限することで、静脈の血流が滞り、血液の粘度が高まる状態が発生するため、血栓リスクの上昇が懸念されることもあります。
「ウィルヒョウの三徴」として知られる以下の3つの条件がそろうと、血栓ができやすくなるとされています。
血流の停滞
血管内皮の損傷
血液の凝固能の亢進
BFRトレーニングでは、意図的に「血流の停滞」が起こるため、特に水分管理による血液のサラサラ化が重要なポイントとなります。
脱水になると、血液中の水分が減少し、血漿(けっしょう)の粘度が上昇します。これにより、血液の流れは遅くなり、血栓ができやすい環境が生まれます。
BFRトレーニング中は、運動量自体は軽くても交感神経の刺激により発汗や利尿が起こりやすく、隠れ脱水になりやすいのです。そのため、こまめな水分補給が、血栓リスクを下げる重要な対策になります。
ここで注目されているのが、「グリセリン」という成分の活用です。
グリセリンは自然界に広く存在する物質で、保湿剤や食品添加物として使われている安全性の高い成分です。これを飲用で摂取すると、小腸から速やかに吸収されて血液中に入り、血漿の浸透圧(濃度)を上昇させる作用があります。
この作用により、体は血管内の浸透圧を一定に保つため、*体の隅々から水分を血液中に引き込みます。*結果として、血液中の水分量が増え、血液がサラサラになる=血栓ができにくくなるのです。
グリセリンによる水分保持効果は、BFRトレーニングだけでなく、高強度のスポーツや持久系運動(マラソン、トライアスロン、格闘技、水球、テニスなど)にも応用可能です。
激しいスポーツでは、脱水による血液粘度の上昇と体温調節機能の低下が大きな問題になります。
グリセリンは、これらに対して*「ハイパーハイドレーション(過剰水分保持)」*という状態を作り、長時間にわたってパフォーマンスを維持しやすくする効果があると報告されています。
トレーニングまたは試合の90〜120分前に摂取
グリセリン:1.0〜1.2g/体重1kgあたり
水分:20〜30ml/体重1kgあたり
グリセリン:60〜72g
水分:1.2〜1.8リットル
※1時間ほどかけてゆっくり飲むことで、腸への負担を抑えつつ吸収を促進できます。
初めて使用する際は、必ずテストを行うこと(お腹が緩くなる人も)
糖尿病や腎機能に問題がある方は、医師に相談してから使用してください
市販の「飲用可・高純度グリセリン(USPグレード)」を使用しましょう
実践法 | 目的 |
|---|---|
① 適切な水分摂取 | 血液粘度を下げて血栓リスクを下げる |
② グリセリン摂取 | 水分保持力を高め、脱水予防+血流改善 |
③ 加圧・除圧の適切なタイミング | 静脈還流を促進し、血流の停滞を防ぐ |
④ 長時間の加圧や無理な負荷を避ける | 血管への負担軽減 |
BFRトレーニングをはじめとしたさまざまなスポーツ活動において、水分管理と血液の流れを意識することは、安全性を高めるカギです。特に、グリセリンの摂取は、血栓予防だけでなくパフォーマンス維持にも寄与する、非常に有用なアプローチといえるでしょう。
トレーナーや指導者、アスリート自身がその仕組みを理解し、科学的な根拠に基づいて取り入れることで、より安全で、より効率的なトレーニング環境が実現されます。
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BFRトレーニング

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通常のトレーニングには1RM(1回持ち上げることが限界の重さ)の60%以上の重さを必要としていますが、BFRトレーニングでは1RMの20%程度の重さで効果を得るとができます。
BFRトレーナーズ協会は、安全で的確なトレーニングの指導を行い、正しい知識と技術を持ったトレーナーを育成し、より多くの人たちにその効果を実感してもらえるようBFRトレーニングの普及を目指します。
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