BFRトレーニングでは主に速筋繊維が使われ、乳酸が発生します。乳酸が発生すると、そのシグナルが脳下垂体に伝わり、成長ホルモンが分泌されます。成長ホルモンは体脂肪を分解したりコラーゲンの合成を促したりすることにより、ダイエットに役立つほか、アンチエイジングにも効果的であるという話を前回ご紹介しました。今回はBFRトレーニングがリハビリテーションにも役立つという話をしたいと思います。私たちの身体は60兆個もの細胞からつくられていますが、そのままだと細胞はバラバラになってしまいますので、細胞どうしをくっつける接着剤が必要になります。細胞同士をくっつける接着剤のことを、ECM(Extra Cellular Matrix:細胞外マトリックス)と呼びます。そしてECMの主な構成物質が、コラーゲンなのです。他にヒアルロン酸やプロテオグリカン、フィブロネクチンなどの糖タンパクも構成物質となります。例えば肉離れをするとき、実際に壊れてしまうのは細胞そのものではありません。多くの場合において、壊れるのはECMなのです。つまりECMがしっかりしていれば肉離れもしにくいということになります。ここで、BFRトレーニングが成長ホルモンを分泌させるということを思い出してください。また、成長ホルモンがコラーゲンの合成を促進するということも。つまりBFRトレーニングによってECMが強化されるため、肉離れなどを起こしにくくすることができるのです。また肉離れしてしまったとしても、BFRトレーニングを行って成長ホルモンを分泌させることで、治りを早くすることができるということになります。また加齢によって、膝や肩、腰など、ふしぶしが痛くなることがあります。「ふしぶし」の痛みというものは、主に結合組織(軟骨や腱、靭帯など)の問題からきています。こういった結合組織も、実はコラーゲンが主な構成物質となっているのです。つまりBFRトレーニングによってコラーゲンの合成を促進することにより、ふしぶしの痛みが改善されることが期待できるのです。実際に変形性膝関節症や肩関節腱板断裂、腰部脊柱管狭窄症、関節リウマチなどの患者19名を対象にした研究(※1)では、軽度のBFRトレーニングによって有意な改善が認められています。さらに脊髄空洞症をはじめとする神経変性疾患への新たな治療法となる可能性も示唆されています。(※2)ふしぶしの痛みに悩んでいたり、肉離れがクセになったりしてしまっている方は、ぜひBFRトレーニングを試してみてください。※1:血液循環療法が骨関節疾患の疼痛に及ぼす影響‐駆血帯を用いた新しい運動療法の試み※2:神経変性疾患治療への運動療法(BCT)の応用について-脊髄空洞証の治療に関する臨床報告