ケガなどでトレーニングできなくなると、心も沈んで身体だけでなく精神的にも病んでしまいがちです。しかし「片方だけトレーニング」することで、逆側もトレーニングできるとなればどうでしょうか。多くの場合、身体の両側ともケガをすることはなく、右肩はダメだけど左肩は動かせるというように、片方だけを傷めてしまうものです。そこで、「できるほうの側」だけでトレーニングしてみましょう。オーストラリアで行われた研究で、30人を対象に、4週間にわたって片方の腕を1日8時間固定して動かせなくしました。そして逆側の腕のみをトレーニングしたのです。(※1)その結果、トレーニングした腕はもちろん筋肉量が増えましたが、トレーニングしていない方の腕もわずかながら増えていたのです。逆側の腕をトレーニングしなかった場合、筋肉量は21.7%減りました。普通にトレーニングした群はプラマイゼロ。ネガティブオンリーでトレーニングした群はなんと12.7%増加。このような結果が出た理由としては、脳からの信号がトレーニングしなかったほうにも送られていることが原因ではないかと考えられています。ではBFRならどうでしょうか。やはり30名を対象にした研究で、普通のトレーニング(75%1RMで10レップス4セット)とBFRトレーニング(20%1RMで30→15→15→15)を比較しました。対象はヒラメ筋です。(※2)その結果、逆側の最大随意収縮(MVC)と筋断面積(CSA)は増加させられませんでした。しかし逆側のRTD(rate of torque development)、すなわちトルクが発揮されるまでの速度を、どちらのトレーニングも向上させることができたのです。なおトレーニングした群の筋力とCSAは4週間のデ・トレーニング後も維持されましたが、RTDは維持できなかったようです。このことから、BFRで疲労させない程度に刺激しておき、数日後に試合を行うというようなプレコンディショニングが、アスリートの間で行われるようになる可能性があります。またケガをしてトレーニングできない間も、トレーニングできる側だけBFRを行うことでRTDの低下を防ぐことができると考えられます。※1:Contralateral effects of eccentric resistance training on immobilized armScand J Med Sci Sports. 2021 Jan;31(1):76-90.※2:Contralateral training effects of low-intensity blood-flow restricted and high-intensityunilateral resistance trainingEur J Appl Physiol. 2021 May 12. doi: 10.1007/s00421-021-04708-2.