BFRトレーニングにおいてはヒートショックプロテインや一酸化窒素合成酵素(NOS)が増加することが知られています。一酸化窒素(NO)はmTORを活性化してタンパク合成を高めるため(※2)、BFRトレーニングによる筋肥大の作用機序として、NO合成増加がその一端を担っていることは確実だと思われます。血管壁には血流による「ずり応力(shear stress)」が作用します。血流が多ければshear stressは増加し、血流が少なければshear stressは減少します。このときにshear stressを一定のレベルに保とうとする力が働き、shear stressが増加すると血管が拡がって血液を流しやすくし、shear stressが減少すると血管は狭くなって血液の流れは悪くなります。BFRトレーニングは機械的にshear stressを増加させたり減少させたりするわけですが、それによって内皮のDNA合成が刺激され、内皮細胞が増える可能性が指摘されています。ほかにもヒスタミンやプロスタサイクリンなどの産生が刺激されたり、細胞外マトリックスの産生が促進されたりなどの影響があると言われています。このときに大きく関係するのがアルギニンです。アルギニンはNOの基質となり、NO分泌を増加させます。つまり「BFR+アルギニン」により血管の機能が改善され、動脈硬化の予防や改善に役立つと思われます。アルギニンは摂取して60分後に血中濃度が最大となりますが、NOの増加が最大になるのは90分後くらいになるため、トレーニングの75分前くらいに飲むと良いでしょう。この場合、プロテインと一緒に混ぜてしまっても構いません。量としては4~6gで十分な効果が得られます。※1:A mechanistic approach to blood flow occlusion. Int. J. Sports Med. 2010;31:1–4. doi: 10.1055/s-0029-1239499.※2:Activation of calcium signaling through Trpv1 by nNOS and peroxynitrite as a key trigger of skeletal muscle hypertrophy. Nat. Med. 2013;19:101–106. doi: 10.1038/nm.3019.