BFRトレーニングで「痛み」が減るということは経験的に確認されています。日本では長年バレエダンサーの身体と向き合い、リハビリを行われてきたBFRトレーナーズ協会の里見先生の研究が有名で、骨関節疾患24名38部位中の23名35部位においてVAS(Visual Analog Scale)による疼痛評価が改善しています。(※1)海外でも研究が行われており、膝蓋大腿疼痛症候群(PFPS)の患者79名を対象に8週間に渡ってレッグプレスとレッグエクステンションを70%1RMで行わせた群と30%1RMかつBFRで行わせた群とで比較しています。(※2)その結果、BFR群は対照群と比較して93%もの痛みの改善が認められ、さらにレッグエクステンションにおいては対照群よりもトルクの改善がみられています。また48名の膝関節症の女性患者を対象に、12週間に渡って高強度(80%1RM)のトレーニングか低強度(30%1RM)でのトレーニング、30%1RMかつBFRトレーニングを受けさせたところ、高強度群とBFR群とでは同等の筋力(レッグプレス)増加、大腿四頭筋断面積の増加が認められ、低強度群とは有意に差がつきました。(※3)ただし高強度群は途中で痛みが強くなったため4名が脱落し、いっぽうで低強度群とBFR群は痛みスコアが改善しています。つまりBFR群は筋力と筋肉量を増加させつつ、痛みを改善するということになります。BFRトレーニングで痛みが改善する理由はいまだにハッキリとしないのですが、今からでも臨床に応用するのに遅すぎるということはないでしょう。※1:血液循環療法が骨関節疾患の疼痛に及ぼす影響-駆血帯を使用した新しい運動療法の試み-※2:Quadriceps strengthening with and without blood flow restriction in the treatment of patellofemoral pain: a double-blind randomised trialBr J Sports Med. 2017 Dec;51(23):1688-1694. doi: 10.1136/bjsports-2016-096329. Epub 2017 May 12.※3:Benefits of Resistance Training with Blood Flow Restriction in Knee OsteoarthritisMed Sci Sports Exerc. 2018 May;50(5):897-905.