BFRトレーニングで筋肉量が増えることはすでに周知のこととなっています。しかし筋力を高めるためには、高重量でトレーニングする必要があるというのが常識として残っています。しかし血流制限によって酸素濃度が低下し、解糖系が優先されるということは、速筋繊維が主に使われるということにもなります。つまりBFRトレーニングは軽い重量でも速筋繊維が使われますので、筋力は向上するのではないでしょうか。20歳から80歳の被験者を対象にした16本の論文を分析したシステマティックレビュー/メタ分析で、高重量トレーニングとBFRトレーニングで筋力の向上について比較しています。その結果、筋力増加に違いはなかったとされています。(※1)高重量トレーニングは神経系の発達も起こりますので、軽い重量でのBFRトレーニングよりも強く筋力増加が起こるはずなのですが、結果としてはそうでもないようです。軽い重量のBFRトレーニングでも神経系はある程度の発達が起こるのでしょう。高齢者は高重量でのトレーニングを適用しにくいため、特にBFRトレーニングが有用となりそうです。合計238名の高齢被験者を対象にした11本の論文からなるシステマティックレビュー/メタ分析によれば、軽い重量のトレーニングやウォーキングにおいて血流制限を行うことで、筋力を有意に改善することが明らかとなっています。(※2)また前十字靭帯再建手術を行った患者28名を対象にした研究では、70%1RMでレッグプレスを行った群と30%1RMでBFRレッグプレスを行った群とで比較しています。(※3)その結果、どちらも同等に筋力と筋肥大が起こり、BFR群では膝の痛みや浸出液が70%1RM群よりも少なかったことが観察されました。高齢者にもリハビリにも有効に使うことのできるBFRトレーニングは今度さらに適用される範囲を広げていくことでしょう。著者:山本 義徳※1:Effect of blood-flow restricted vs heavy-load strength training on muscle strength: Systematic review and meta-analysis.Scand J Med Sci Sports. 2020 Feb 7. doi: 10.1111/sms.13632.※2:Effects of Blood Flow Restriction Training on Muscular Strength and Hypertrophy in Older Individuals: A Systematic Review and Meta-AnalysisSports Med. 2019 Jan;49(1):95-108. doi: 10.1007/s40279-018-0994-1.※3:Comparing the Effectiveness of Blood Flow Restriction and Traditional Heavy Load Resistance Training in the Post-Surgery Rehabilitation of Anterior Cruciate Ligament Reconstruction Patients: A UK National Health Service Randomised Controlled TrialSports Med. 2019 Nov;49(11):1787-1805.