バレエ・ダンス障害と捻挫捻挫は普段の生活でも高い頻度で発生する外傷です。階段の踏み外し、ランニング中、ボールゲームの最中などスポーツ時に多く発生します。さらに捻挫は最も多くのダンサーとバレエを学ぶ生徒が経験するダンス障害です。捻挫は受傷後の処置を安易に考えられることが多く、処置を適切に行なわれることがなかったために、生涯を通じて捻挫の後遺症に悩まされるケースが多く発生します。捻挫とは最もよく見られる足関節捻挫の場合、足を内返ししたために足関節の外側にある側副靱帯が損傷を受けます。加わった外力が大きく、靱帯断裂があり関節のぐらつき(不安定性)が強い時はしっかりとした固定が必要となり、復帰時期も遅くなります。ひどい場合は、ギブス固定や手術が必要な場合もあります。このときにしっかりとした治療を行わないと、断裂した靱帯がつかないまま関節のぐらつきが残り、捻挫を繰り返すようになります。このようにして慢性化した捻挫はバレエの稽古に支障を来すことになります。固定が終了したのちのリハビリテーションも重要です。なぜならば、足関節のそれぞれの動きを担う筋肉は、動く方向によってアンバランスな状態になっているからです。足関節には全体重がかかり、それを受け止めるために神経と筋肉が調和の取れた運動をします。しかし、いったん損傷を受けるとその神経と筋肉の調和の乱れが生じ、しっかりとした運動ができなくなります。再受傷しないために足を外返しする筋肉を鍛えたり、不安定な床に立つことにより神経と筋肉との調和のとれた(協調運動)関係を改善したりするようなリハビリテーションも必要となります。このような訓練を行った上でバレエに復帰することが理想的です。 捻挫の問題点捻挫の一番の問題は、焦るあまりしっかりとした治療をせずにすぐにバレエへ復帰することです。これにより、稽古中、リハーサル中に損傷を受けた靱帯が再び断裂したり、あるいは、伸びたままの状態になり関節がぐらついたりし、再度発症します。この状態を放置したままバレエを続けると、比較的若い年齢でも関節軟骨の変性が起きて、変形性関節症の状態になります。しかし、プロのダンサーやコンクール・発表会を目前に発症した場合、舞台に立たないとならないことがあり、痛み止めの注射をして踊ることがあります。スポーツの場合、前述の訓練をしつつ、装具を装着したりして、テーピングをして試合に出ることができますが、バレエではそれはできません。これまで、この痛み止めの注射による舞台出場が唯一の方法でした。BFRリハビリと捻挫一般的なバレエの稽古中に発症した捻挫の場合、1回から3回のBFRリハビリを応用した治療で、その痛みを抑えることに成功しました。もちろん、重度の捻挫にはそれなりに時間を掛けた治療が必要ですが、舞台を直前に受傷したダンサーの捻挫の鎮痛を目的とした治療法として、BFRリハビリは効果的な運動処方として注目できます。「里見悦郎のバレエ障害講座:BFRトレーニングを用いたバレエ障害治療」より