BFRトレーニングにおけるリスクは、大きく次の3つに分類される。BFRトレーニングのリスク1. 血栓2. 虚血再灌流障害3. 低血圧■血栓生成のメカニズムそもそも、なぜBFRトレーニングによって血栓ができるのか。ケガをして出血した場合、その部位に血小板が集まってくる。血管壁の傷を修復するために、血小板が応急処置をするのだ。血小板が集まってくることを、「血小板の凝集」と呼ぶ。ここまでが「一次止血」である。そして次にフィブリノーゲンという物質がフィブリンに変換され、これが凝集した血小板と絡み合うことで、血栓ができ、止血される。これを「二次止血」と呼ぶ。ここまでをまとめて「凝固系」と呼ぶ。フィブリノーゲンがフィブリンになるとき、「トロンビン」を必要とする。トロンビンの材料となるのが「プロトロンビン」という血漿タンパクだ。プロトロンビンにカルシウムイオンやトロンボプラスチンが働くことによって、トロンビンができる。これら血液凝固に関係してくる物質を「凝固因子」と呼び、例えばフィブリノーゲンやフィブリンは第一因子、プロトロンビンやトロンビンは第二因子、トロンボプラスチンは第三因子、カルシウムイオンは第四因子とされている。なお血液が固まったままではマズイ。血管が修復され、血栓が必要なくなったら、そこにプラスミンという物質が働いて血栓を溶かす。これを「線溶系」と呼ぶ。では血流が悪くなると、なぜ血栓ができやすくなるのか。凝固系には「内因性」と「外因性」がある。血管外に漏れた血液が凝固するのが外因性であり、血管内で血液が凝固するのは内因性だ。よってBFRトレーニングで生成される血栓は内因性である。一般的に外因性血液凝固は速い(1013秒)が、内因性血液凝固の進行は遅い(1520分)。つまり短時間でBFRトレーニングを終えれば、血栓ができる心配は少なくなる。外因性の場合は損傷した組織からTF(組織因子)が放出される。これは血液にとっては外部の物質であるため、速やかに凝固反応が活性化する。内因性の場合はすべて血液の中にある凝固因子だけで行われる反応であり、時間がかかる。血管内皮細胞が破壊されることによる内因性血液凝固の場合、動脈硬化や感染症が主な原因となる。エコノミークラス症候群やBFRトレーニングにおける内因性血液凝固では、血管内皮細胞は破壊されない。このような場合は、赤血球が関係してくる。赤血球の膜には「エラスターゼ」と呼ばれるタンパク質が存在し、それは血液凝固第Ⅸ因子を活性化して血栓を作りやすくする作用を持っている。血液の流れが速いときにはエラスターゼと第Ⅸ因子が接触しにくいため、第Ⅸ因子は活性化されず、血液は凝固しにくい。しかし血液の流れが遅くなると、エラスターゼと第Ⅸ因子が接触する可能性が高くなるため、第Ⅸ因子が活性化し、血液が凝固しやすくなるのだ。なお脱水などによってヘマトクリット(赤血球数)が増加すると、第Ⅸ因子の活性化は促進される。