2003年頃、日本医学会にて衝撃的な発表がありました。それは日本の保育園・幼稚園児の全国的な検査の結果、その4割から6割の子供に土踏まずが無かったのです。2006年里見悦郎氏による東京都内での保育園・幼稚園で追跡調査をしましたが、同様の結果でした。土踏まずは、立位姿勢、歩行動作の基本となり、その形成はその後の生涯を通しての生活に大きな影響を及ぼすのです。生まれてきたばかりの赤ちゃんには土踏まずはありません。その後、2歳から5歳までの時期に土踏まずが形成されるのです。しかし、土踏まずは形成する時期を逃すと一生形成されないのです。その結果、土踏まずが形成されていない子どもは立位姿勢、歩行動作、さらには複雑な運動動作に影響を受けることになります。また、土踏まずの形成が十分でない場合、あるいは土踏まずの構造に何らかの原因で不具合が発生した場合、姿勢、動作に決定的なダメージを与え、それが人体工学上、障害発生の原因ともなるのです。この統計から、全国でバレエを学ぶ4~6割の幼児は土踏まずの形成不全の状態でバレエの訓練を受けていることになります。バレエ教師とバレエを子供に学ばせる親は、子供たちの健康を考える場合、この土踏まずの形成不全の問題を理解する必要があるのです。なぜならば、10歳前後で始まるトウシューズの訓練とその舞踊テクニックには、足の骨格構造・足裏の筋肉の強化訓練に大きな影響を土踏まずの問題が与えるからです。さらに、身長が急激に伸びる10~16歳の急成長期に足(足関節から下の部位)、脚(足関節から上の部位)に痛みを訴え、正しいバレエ姿勢が保持できない場合、この土踏まずの問題を考える必要があります。「里見悦郎のバレエ障害講座:BFRトレーニングを用いたバレエ障害治療」より