コラム

子どものバレエ障害 2/2


  • BFRトレーニング
  • 筆者:里見 悦郎
人は成長と共に身長が伸び、体重が増加します。特に、児童期の身長の伸びは大きな影響を身体に与えることが判っています。さらに、男女の性差によって、成長期の身体の変化は異なるため、この成長期のバレエ障害を診察するには注意が求められます。

小学校高学年から中学、高等学校に掛けての身長の変化は、極めて大きな影響を身体に与えますが、身体の変化は、遺伝的条件、家庭環境、日常生活などの様々なことがらによる影響があり、個人差が現れます。そのため、常に、痛みを訴える子どもの声を真摯に聞く姿勢が求められます。

問題は、成人が痛めた箇所と子どもが痛みを訴える箇所が同じあっても、その痛みの原因は異なるケースがあることを忘れてはなりません。特に、「痛み」は心の問題と結び付くことがあります。ですから、クラシックバレエを学ぶ児童の痛みを訴える声には、先入観を捨て、耳を傾ける必要があります。

子どもの身体の変化と成長痛


成長期の子どもの身体は毎日目まぐるしい変化をしています。特に、成長期、骨格を作る骨細胞の新陳代謝は高まり、骨の成長を促進させます。骨の成長は個人差が大きく、身長が伸びる時期はそれぞれの子どもによって異なります。このため身長が伸びる時期は、クラシックバレエのレッスンは注意を要します。

成長期の骨には、骨細胞の増殖が集中的に起きる部位があります。この部位が伸びることで骨は長く成長します。この骨細胞の増殖の盛んな部位が、筋肉の腱が骨に付着する部分「粗面」と近接する場合、その箇所を中心に痛みを発することが起きるのです。
1903年アメリカ人医師オーグストとドイツ人医師シュラッターが研究し、発表したことから「オーグスト・シュラッター病」として成長痛は注目されるようになりました。

オーグストとシュラッターは、成長期の児童の膝下の痛みの原因を究明したのです。

太ももには、大腿四頭筋と呼ばれる歩行と姿勢の保持に係わる大きな筋肉があります。その筋肉は4本に別れているのですが、4本に分かれた筋肉が膝のお皿(膝蓋骨)の下で1本になり脛骨に付着しているのです。この大腿四頭筋の一つ大腿直筋は、ある時は、膝下の下肢を引っ張り上げて、脚を真っ直ぐに伸ばす中心的な働きをします。さらに、歩行時、ジャンプ時には膝に掛かる体重を支える役割をします。この歩行、ジャンプの着地時の上半身の体重が、膝蓋骨の下にある大腿四頭筋の腱を通じて、脛骨と大腿四頭筋の付着箇所「脛骨結節」を強く引っ張ることになります。

「脛骨結節」は10歳以前には軟骨でできているのですが、その後、脛骨の上端から下へ向かって骨となります。骨の先端の骨端軟骨が消えて骨に変わる時期に、この軟骨が残っていてまだ骨になりきっていないとき、この軟骨の部分は力学的に弱く、繰り返しジャンプなどをしていると、その部分が大腿四頭筋の張力に負けて、軟骨部が跳び出してきて、痛みが出るようになります。

成長期の12歳前後の男児に多く、この部位の痛みが発生します。成長期の骨の成長が止むまでの2年間ぐらいで治ります。このように成長期の骨の変化が原因で、痛みを発するケースがクラシックバレエではあるのです。


バレエと成長痛


成長痛を癒す方法はありません。残念ですが、骨の成長が止まり、軟骨が骨に変わるのを待つしかありません。しかし、動作学上、成長痛を発する部位に力学的な大きな付加を掛けないように気を付けて、バレエのレッスンを続けることは可能です。

プリエでは、意識的に深く腰を落とさず、膝下に付加を与えないように注意する。さらに、上半身の体重を上に引き上げるための脊椎深層筋、さらに体幹部の筋肉の使い方を学び、体重が腰から下の下肢に掛かるのを緩和するなど、バレエ動作にリハビリの骨格操作を併用することで、この成長期を乗り切ることができます。このため成長痛を抱える10代前期の若いダンサーは、クラシックバレエの動作と動作解剖学を熟知した運動療法指導員の指導を定期的に受け、バレエのレッスンを継続することが必要となります。

「里見悦郎のバレエ障害講座:BFRトレーニングを用いたバレエ障害治療」より

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