「里見悦郎のバレエ障害講座:BFRトレーニングを用いたバレエ障害治療」バレエダンサーと怪我世界のバレエ界に電撃的な知らせが届いたのは、2003年のことでしたパリオペラ座バレエ団プリマバレリーナオーレリー・デュポンが膝を怪我し、手術を執刀した医師から「手術後はもう踊れないかもしれない」との報告を受けたのです。このパリオペラ座のプリマバレリーナの悲報は世界に伝わり、大きな衝撃となりました。しかし、手術後1年間にわたるリハビリでデュポンは奇跡的に復帰し、舞台に立ったのです。デュポンは「怪我で休んでいた1年間は、『必ず復帰するんだ』というポジティブな気持ちを持ちつづけるよう努力しました。手術をしてギブスをしていたので、筋力が衰えてしまったのです。トレーナーの指導を受けながら、筋力を取り戻すことに重点を置いてリハビリをしました。医師より、もう踊れないだろうと言われショックでした。でも、トレーナーの方が『君は必ずまた踊れる』といい、プログラムを組んでくれました。そのお陰で回復できたのです」と語る。手術を受けることは、リスクを伴うことです。深部の痛めた患部を治すために、メスを入れることは健全な組織にもメスを入れないとならないこともあります。その患部の傷が癒えるまでの間に、筋肉は萎えてしまい、舞台に戻るまでのリハビリに余計な時間を取られてしまうのです。デュポンは、彼女の復帰のために誠心誠意最善の努力してくれるトレーナーと出会いました。リハビリはまさに、優れたトレーナーと出会えるかどうかにその成功の鍵があります。さらに、トレーナーが立てるリハビリのためのプログラムによって、成果は左右されます。このようにリハビリは、手術を執刀する医師、トレーナー、リハビリプログラムが完璧にそろい、さらに、患者が「必ず、良くなる」とポジティブな姿勢を維持し、リハビリプログラムを忠実に実施した時に成果を上げることができるのです。海外のバレエ障害リハビリプログラムデュポンは「今回の経験から強く思ったのは、ダンサーの身体にくわしい外科医が全くいないということ。スポーツ障害は発達しているけれども・・・・・。ダンスに詳しい外科医がいれば、どんなに私たちの助けになることかと痛感しました」と語る。世界のクラシックバレエ界の最高峰であるフランスでさえ、バレエ・ダンス障害の専門外科医、リハビリ指導員はいないのです。ダンスと言っても、クラシックバレエとモダンダンス、コンテンポラリーダンス、ジャズダンス、創作ダンス、社交ダンス、フラメンコダンスは体重の掛け方、立姿勢、回転の仕方などテクニックが違います。ですから、一見同じように見える踊りでも、体重の掛け方、回転の入り方、回転中の姿勢、ジャンプの着地の仕方によって、身体の使い方が異なるのです。そのためダンスの種類とその舞踊テクニックの違いにより、障害の進行の仕方、怪我の症状が異なるのです。バレエ・ダンス障害の手術、治療、リハビリが難しいのは、そのためです。デュポンが指摘するように、スポーツ障害とバレエ・ダンス障害は似ていますが、その対処は異なります。ダンサーが怪我をした時、その障害の専門的な知識を持つ医師、リハビリ指導員と出会えるかどうかがとても大切なことなのです。BFRリハビリとバレエ・ダンス障害日本でBFRリハビリの必要なバレエダンサーを見てきたトレーナーは、その経験からすぐれたリハビリプログラムの事例を豊富に蓄えています。このリハビリ指導の経験豊かなトレーナーとバレエ・ダンス障害を専門とするリハビリ指導員の協力により、これまでにないダンサーのためのリハビリが可能となったのです。すなわち、患者は、バレエとダンスのための舞台復帰までの具体的なリハビリプランを受けることができるようになったのです。BFRリハビリは、成長ホルモンの分泌を促進させることにより、治癒までの時間を大幅に短縮することができる画期的なリハビリです。舞台に追われるバレエダンサーと指導に追われるバレエ教師にとって待ち望まれていたリハビリなのです。「里見悦郎のバレエ障害講座:BFRトレーニングを用いたバレエ障害治療」より