コラム
2023/07/07

前回はmTORC1について解説しました。今回からはmTORC1の活性化に関係する栄養素について紹介していきましょう。
まずは何といっても「ロイシン」です。BCAAにはアナボリック効果があるとされますが、その主な作用はロイシンが担っています。(※1)
またロイシンはインスリン分泌も刺激して、こちらの方向からもタンパク合成を高めます。(※2)さらにミオスタチンを減らすことにより筋肉を増やすという効果も認められています。(※3)
またロイシンはリソソーム系におけるオートファゴソーム形成の阻害や、タンパク分解酵素であるプロテアソームを阻害してタンパク分解を防ぐ作用もあります。(※4、※5)
具体的にはどれくらいの量が必要なのでしょうか。
ホエイ摂取量を10gと 20g, 30g, 40gそれぞれに分けて摂取し、タンパク合成酵素の活性を調べたところ、多く摂取するほど合成が活発になりました。(※6)ホエイ40gに含まれるBCAAは、10g弱となります。
なお面白いことにロイシンが多く含まれる必須アミノ酸サプリメントを「3gだけ」摂取したところ、20gのホエイプロテインと同程度の筋タンパク合成が起こったという報告もあります。(※7)
ロイシン単体とBCAA、EAAをそれぞれトレーニング中に摂取した研究があります。(※8)
その結果、タンパク合成酵素であるp70s6kの活性はEAAが一番高くなり、ついでBCAA、最後にロイシン単体という結果でした。つまりロイシンは単独で摂取してもあまり効果はなく、EAAとして摂取するか、悪くてもBCAAとして摂取しないと効率は良くないということになります。
EAAの効果を最大化するためには15gの摂取が推奨されます(※9)が、この場合、ロイシンの配合量を増やす必要はなく、15gのEAAに含まれるロイシンで絶対量として既に十分だとされています。この研究ではロイシンは2.79g、イソロイシンは1.56g、バリンは1.73gとなっています。
なおイソロイシンにはロイシンにも勝る強いグルコース取り込み作用があります。
(※10、※11)
またイソロイシンはPPARαをアップレギュレートさせると同時にUCP2やUCP3を増加させ、体脂肪を減らす可能性もありそうです。(※12)
さらにバリンはTCAサイクルにおける中間体を作り出し、TCAサイクルの循環をスムースにします。
これらのことからも、ロイシン単体ではなく少なくともBCAAとして摂取したほうが良いと思われます。
※1:
Role of leucine in the regulation of mTOR by amino acids: revelations from structure-activity studies.
J Nutr. 2001 Mar;131(3):861S-865S.
※2:
Leucine promotes glucose uptake in skeletal muscles of rats.
Biochem Biophys Res Commun. 2002 Dec 20;299(5):693-6
※3:
L-leucine, beta-hydroxy-beta-methylbutyric acid (HMB) and creatine monohydrate prevent myostatin-induced Akirin-1/Mighty mRNA down-regulation and myotube atrophy.
J Int Soc Sports Nutr. 2014 Aug 13;11:38. doi: 10.1186/1550-2783-11-38. eCollection 2014.
※4:
Nutrient control of macroautophagy in mammalian cells.
Mol Aspects Med. 2006 Oct-Dec;27(5-6):426-43. Epub 2006 Sep 26.
※5:
Branched-chain amino acids and arginine suppress MaFbx/atrogin-1 mRNA expression via mTOR pathway in C2C12 cell line.
Biochim Biophys Acta. 2008 Oct;1780(10):1115-20. doi: 10.1016/j.bbagen.2008.06.004. Epub 2008 Jun 18.
※6:
Dose-dependent increases in p70S6K phosphorylation and intramuscular branched-chain amino acids in older men following resistance exercise and protein intake.
Physiol Rep. 2014 Aug 7;2(8). pii: e12112. doi: 10.14814/phy2.12112. Print 2014 Aug 1.
※7:
Intake of low-dose leucine-rich essential amino acids stimulates muscle anabolism equivalently to bolus whey protein in older women at rest and after exercise.
Am J Physiol Endocrinol Metab. 2015 Jun 15;308(12):E1056-65. doi: 10.1152/ajpendo.00481.2014. Epub 2015 Mar 31.
※8:
Activation of mTORC1 by leucine is potentiated by branched-chain amino acids and even more so by essential amino acids following resistance exercise.
Am J Physiol Cell Physiol. 2016 Jun 1;310(11):C874-84. doi: 10.1152/ajpcell.00374.2015. Epub 2016 Apr 6.
※9:
Amino acid ingestion improves muscle protein synthesis in the young and elderly
American Journal of Physiology - Endocrinology and Metabolism
Published 1 March 2004Vol. 286no. 3, E321-E328DOI: 10.1152/ajpendo.00368.2003
※10:
Isoleucine, a blood glucose-lowering amino acid, increases glucose uptake in rat skeletal muscle in the absence of increases in AMP-activated protein kinase activity.
J Nutr. 2005 Sep;135(9):2103-8.
※11:
Hypoglycemic effect of isoleucine involves increased muscle glucose uptake and whole body glucose oxidation and decreased hepatic gluconeogenesis.
Am J Physiol Endocrinol Metab. 2007 Jun;292(6):E1683-93. Epub 2007 Feb 13.
※12:
Isoleucine prevents the accumulation of tissue triglycerides and upregulates the expression of PPARalpha and uncoupling protein in diet-induced obese mice.
J Nutr. 2010 Mar;140(3):496-500. doi: 10.3945/jn.109.108977. Epub 2010 Jan 20.
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