コラム
2023/07/07

Part3ではmTORC1を活性化することでタンパク合成が促進されるという話をしました。では、どうすればmTORC1は活性化されるのでしょうか。
インスリンやテストステロン、IGF-1、成長ホルモンなどのホルモンは、すべてmTORC1を活性化させます。またトレーニング自体もmTORC1を活性化させ、また20%1RM程度の軽い負荷におけるBFRトレーニングもmTORC1を活性化させます。(※1)
そして逆にmTORC1が活性化しないようにすると、BFRトレーニングを行ってもタンパク合成は起こりません。(※2)
栄養素の中では、アミノ酸のロイシンが特にmTORC1活性化を引き起こします。(※3)
また十分な量のグルタミンが存在することが、mTORC1活性化の条件ともなっています。
(※4)
※4の研究においては、糖尿病のラットの場合、mTORシグナル伝達系におけるAktのリン酸化が著しく損なわれるのですが、それをグルタミンのサプリメンテーションによって防ぐことができたという結果が出ています。
また糖尿病ではない普通のラットの場合でも、AktのmRNA翻訳レベルがグルタミンの摂取によって2倍になったとされています。
そしてEAAサプリメントでは省かれることの多いトリプトファンにも、実はmTORC1活性化作用がある可能性が認められています。(※5)
※5の研究ではタンパク質が不足した状態において、トリプトファンのサプリメンテーションを行うことにより、IGF-1とレプチン、フォリスタチンを増やし、mTORも活性化したということです。
なおmTORC1の活性化は、低分子量GTP結合タンパクであるRhebによって行われます。Rhebは抑制因子であるGTPase活性化タンパク(GAP)であるTSC1/2によって制御されています。
インスリンなどのホルモンがaktを活性化するとTSC2がリン酸化されて活性が抑制され、Rheb活性が増加します。またaktはPRAS40をリン酸化することによってもmTORC1を活性化します。
Rhebは後期エンドソーム膜状に存在するため、mTORC1を細胞質から後期エンドソーム膜にリクルートする必要があります。このリクルートはGTP結合タンパクであるRagが行うのですが、ここでロイシンとアルギニンが必要とされます。(※6, ※7, ※8, ※9)
またRag非依存的なルートではゴルジ体におけるmTORC1の活性化が起こり、ここではArf1が関与し、アミノ酸ではグルタミンが必要とされます。(※10, ※11, ※12)
このようにトリプトファンを含めた必須アミノ酸EAAとアルギニンやグルタミンがmTORC1活性化において重要な役割を果たしています。
※1:
Blood flow restriction exercise stimulates mTORC1 signaling and muscle protein synthesis in older men
J Appl Physiol (1985). 2010 May; 108(5): 1199–1209.
※2:
Activation of mTORC1 signaling and protein synthesis in human muscle following blood flow restriction exercise is inhibited by rapamycin
Am J Physiol Endocrinol Metab. 2014 May 15;306(10):E1198-204. doi: 10.1152/ajpendo.00600.2013. Epub 2014 Apr 1.
※3:
Role of leucine in the regulation of mTOR by amino acids: revelations from structure-activity studies.
J Nutr. 2001 Mar;131(3):861S-865S.
※4:
Glutamine supplementation stimulates protein-synthetic and inhibits protein-degradative signaling pathways in skeletal muscle of diabetic rats.
PLoS One. 2012;7(12):e50390. doi: 10.1371/journal.pone.0050390. Epub 2012 Dec 11.
※5:
The aromatic amino acid tryptophan stimulates skeletal muscle IGF1/p70s6k/mTor signaling in vivo and the expression of myogenic genes in vitro.
Nutrition. 2015 Jul-Aug;31(7-8):1018-24. doi: 10.1016/j.nut.2015.02.011. Epub 2015 Mar 17.
※6:
Amino acid and small GTPase regulation of mTORC1.
Cell Logist. 2017 Sep 29;7(4):e1378794. doi: 10.1080/21592799.2017.1378794. eCollection 2017.
※7:
Regulation of TORC1 by Rag GTPases in nutrient response.
Kim E, Goraksha-Hicks P, Li L, Neufeld TP, Guan KL
Nat Cell Biol. 2008 Aug; 10(8):935-45.
※8:
The Rag GTPases bind raptor and mediate amino acid signaling to mTORC1.
Science. 2008;320:1496-1501. doi:10.1126/science.1157535. PMID:18497260
※9:
The Vam6 GEF controls TORC1 by activating the EGO complex. Mol Cell. 2009;35, 563-73. doi:10.1016/j.molcel.2009.06.033. PMID:19748353
※10:
Nitrogen source activates TOR (target of rapamycin) complex 1 via glutamine and independently of Gtr/Rag proteins.
J Biol Chem. 2014 Sep 5; 289(36):25010-20.
※11:
Metabolism. Differential regulation of mTORC1 by leucine and glutamine.
Science. 2015;347:194-8. doi:10.1126/science.1259472. PMID:25567907
※12:
An in vitro TORC1 kinase assay that recapitulates the Gtr-independent glutamine-responsive TORC1 activation mechanism on yeast vacuoles.
Mol Cell Biol. 2017;37:e00075-117. doi:10.1128/MCB.00075-17. PMID:28483912
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