Part 1とPart 2ではタンパク質の高次構造が正しくつくられるための栄養素について紹介してきました。今回はタンパク質の合成がどのようにして起こるかについて解説していきましょう。タンパク質は酵素によってアミノ酸から合成されますが、その酵素を「タンパク合成酵素」と呼びます。特に知られているのがリボゾームタンパク質S6をリン酸化する酵素(セリンスレオニンキナーゼ)の「p70S6k」です。pはプロテインのp、70は質量、kはキナーゼを示します。DNAがRNAに転写され、タンパク質に翻訳されるときにはeIF(eukaryotic initiation factor)という翻訳開始因子によってさまざまな制御を受けます。mRNAの構造をeIFが認識することによって翻訳が開始されるのですが、この認識を担っているのがeIF4F複合体です。eIF4F複合体はeIF4AやeIF4E、eIF4Gから構成されているのですが、eIF4EとeIF4Gの結合が阻害されていると翻訳が開始されません。ここで働いているのが4E-BPです。低リン酸化状態の4E-BPはeIF4Eと結びつきやすいため、eIF4Gとの結合を阻害してしまうのです。しかし4E-BPがリン酸化されるとeIF4Eから解離するため、eI4GがeIF4Eと結合し、eIF4Fが形成されてタンパク質の合成が開始されます。p70S6kはS6キナーゼをリン酸化し、eIF4Aヘリカーゼの活性化因子であるeIF4Bを活性化したり、eIF4A阻害因子であるPDCD4を阻害したりすることにより、eIF4Fの形成を促進してタンパク合成を促進させます。このp70S6kや4E-BP1をリン酸化するのが、mTORC1です。mTORC1はmTOR自体に加えて、raptor (regulatory-associated protein of mTOR)やDEPTOR(DEP domain containing mTOR-interacting protein、PRAS40(proline-rich Akt substrate40kDa)、mLst8(GβL)をサブユニットとして持っています。いっぽうmTORC2はmTOR に加えて、rictor(rapamycin-insensitive companion of mTOR)、mSin1、mLst8、protor1/2(protein observed with rictor1 and 2;PRR5/PRR5L),DEPTOR から形成されています。mTORC1は「細胞の成長を制御」する働きを持っており、これが活性化されるとp70S6kや4E-BP1がリン酸化されることによってタンパク合成が促進されます。逆にmTORC1が抑制されるとオートファジーが増加して異化作用が亢進します。次回はmTORC1を活性化させる栄養素について解説していきましょう。