筋肉疲労の原因の一つとして、カリウムイオンの漏出が候補として挙げられています。筋肉が収縮するときはアセチルコリンが受容体に結合します。するとアセチルコリン受容体が変化してナトリウムチャネルが開き、ナトリウムイオンが細胞内に流入して脱分極が生じ、活動電位が発生します。このとき、カリウムイオンは細胞外に排出されます。筋収縮が終われば、カリウムイオンは細胞内に戻るのですが、筋収縮が連続して長時間起こると、細胞内に戻ることができません。するとカリウムイオンが細胞外に溜まってしまいます。これにより活動電位が発生しにくくなり、筋疲労の原因になるのではないかという説が2001年に出されました。これを踏まえて考えると、ナトリウムとカリウムが足りない状態だと筋収縮がスムーズに起こらないということにもなります。ナトリウムとカリウムを使って活動電位を発生させ、情報を伝達する機構のことを、ナトリウム‐カリウムポンプと呼びます。私たちの身体のエネルギー源となっているATPの、実に3分の1はこのポンプを動かすために使われると言われています。どうも疲れやすいという人は、ナトリウムやカリウムを主としたミネラルが不足しているのかもしれません。日本人の場合、ナトリウムは十分に摂取していると言われます。しかしその一方で、カリウムの摂取量は足りていません。塩分摂取の弊害はよく強調されていますが、カリウムを十分に摂取することで血圧を下げたり、脳卒中のリスクを下げたりすることができるのです。(※1, ※2, ※3)WHOの基準によると、脳卒中や心筋梗塞の予防に望ましいカリウム摂取量は一日に3510mgとなります。しかし日本人の平均的摂取量としては、一日に2201mg程度だという調査があります。ナトリウム摂取量が多いことを考えると、もっと積極的にカリウムを摂るようにしたほうが良いでしょう。里芋やサツマイモ、ジャガイモには100gあたり300~600mgのカリウムが含まれますので、こういったイモ類を積極的に食べるようにするとともに、昆布やワカメ、ヒジキ、切り干し大根などを食卓に取り入れることをお勧めします。※1:Effects of oral potassium on blood pressure. Meta-analysis of randomized controlled clinical trials.JAMA. 1997 May 28;277(20):1624-32.※2:Daily potassium intake and sodium-to-potassium ratio in the reduction of blood pressure: a meta-analysis of randomized controlled trials.J Hypertens. 2015 Aug;33(8):1509-20. doi: 10.1097/HJH.0000000000000611.※3:Are low intakes of calcium and potassium important causes of cardiovascular disease?Am J Hypertens. 2001 Jun;14(6 Pt 2):206S-212S.